テングバナ
 11月15日は七五三だが、この儀式、私が子供の頃は沖縄に無かった。復帰(1972年)後、大和文化が押し寄せてきて、その頃の若いお父さんお母さんが始めるようになってからではないだろうか。・・・調べる。ちょっと違っていた。『沖縄大百科事典』を見ると、1960年ごろから始まり、復帰後から盛んになったとある。

 さて、天狗とは「深山に棲息するという想像上の怪物。人のかたちをし、顔赤く、鼻高く、翼があって神通力をもち、飛行自在で、羽団扇をもつという。」(広辞苑)ということだが、倭国では鎌倉時代の鞍馬山の天狗などが有名で、古くからいたようである。だが、沖縄には天狗の話は無い。だから、キジムナー(沖縄に住む木の精)に襲われたという話は幾度も聞いているが、天狗に会った人の話を私は聞いたことが無い。
 私が子供の頃は、沖縄はまだアメリカの占領下にあったが、学校でも家でも日本語で生活をしていたし、教科書は倭国の出版社が作る他府県と同じ教科書を使っていたし、学研の小学○年生や、少年マガジン、少年サンデーなどを読んでいた。なので、沖縄には生息しない一反木綿やこなきジジイ、砂かけババアなどもよく知っていた。そして、天狗のことも知っていた。その姿形をテレビや雑誌で見ていた。鼻が高い怪物。

 テングバナの写真を撮って、図鑑で調べて、その名前を見たときは、「なるほど」と合点した。確かに高く伸びた天狗の鼻のようであると思った。

 テングバナ(天狗花):添景
 クマツヅラ科の常緑低木 原産分布はインド、ヒマラヤ 方言名:なし
 花が面白い形をしている。平たく丸い皿状の顎片から細長い筒状の花弁が突き出しており、筒状の花弁を天狗の鼻に見立ててテングバナという名。別名をチャイニーズハット、またはチャイニーズハットツリーというが、これは英語名から。中国人の帽子ということだが、中国人の帽子がこんな形をしているのかどうかについては、私は不明。
 日当りの良い場所を好む。花の色は紅色、開花期は11月から2月。
 高さは3〜5mになるらしいが、私が見たものは潅木状のものであった。「樹高が低い矮性品種がある」と文献にあったので、それかもしれない。黄色花もあるとのこと。

 花
 記:島乃ガジ丸 2006.11.1  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
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