スイレンボク
 初めて会ったのは従姉の別荘で、2005年6月のこと。写真を撮り、従姉に名前を訊いた。「スイレンボクっていうのよ。」とのこと。その名を聞いて納得する。花の、大小を比べるとだいぶ小さいが、形がその通り、スイレンに似ている。
 写真も撮って、何者かも判明したが、ガジ丸HPで紹介できない。参考にしているどの文献にもその名前が無く、似たような花の写真も載っていなかったからだ。
 そうやって一年近くが過ぎ、2006年の4月、従姉の別荘を訪れると、同じスイレンボクが花を咲かせていた。再度写真を撮りながら、「おめぇ、もしかしたら昔の名前があるんじゃないか?」と問う。スイレンボクには旧名があり、私が参考にしている文献はどれも古くて、旧名でしか載っていないのかもしれないと思ったのである。
 そこでふと思い出した参考文献の一つ、古い中でも最も古いものの一つ『沖縄園芸植物大図鑑』、1980年発行だ。参考文献の中でも、古いがゆえにあまり参考にしない文献でもあった。先日、それを最初のページからじっくりと目を通した。
 スイレンボクという名は無かったが、ほぼこれで間違いなかろうと思われる写真はあった。ホシオトギリソウという名前。「そうか、やはり昔の名前があったのか!ずいぶん探したんだぜ、でも、出会えてよかったよ。」と私は大いに喜んだのであった。

 スイレンボク(睡蓮木):添景・花木
 シナノキ科の常緑低木 南アフリカ原産 方言名:なし
 名前の由来、資料は無いが、花の形がスイレン(睡蓮)に似ていることからでほぼ間違いないと思う。私の目も「似ている」と納得している。『沖縄園芸植物大図鑑』にはスイレンボクではなく、ホシオトギリソウ(星弟切草)とあった。『沖縄園芸植物大図鑑』は1980年の発行と古く、その頃はまだスイレンボクという名は無かったのであろう。ちなみに、スイレンはスイレン科で、オトギリソウはオトギリソウ科。
 高さは2mほど。適度に枝分かれし、こじんまりとした樹形となる。剪定も効くので庭の添景に向く。伸ばした枝の途中途中に花を付ける。
 花は黄色い雄しべを囲んで細長い薄紫色の5枚の花弁があり、それと良く似た5枚のがく片がその周りにあって、全体が10枚の花弁に見える。開花期についての資料が無く、正確なところは不明だが、私が目撃した限りでは4月から12月。
 果実は紫色で4つに分かれる。葉には光沢がある。
 ちなみに学名は、Grewia occidentalis Linne

 花
 記:島乃ガジ丸 2010.3.9  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
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