サンゴアブラギリ
 もう10年ほど前になるか、3年ほどの間、趣味で木工をやっていた。木工家のSさんとMさんがやっている工房に通って、電動機械や木工具の使い方などを彼らに教わった。技術だけでなく、木工関係の書物を多く読み、ある程度の知識も得た。
 元々、記憶力の弱い私なので、多くの書物を読んだが、今でも記憶に残って、私の知識となっているものは少ない。それでも、木材については、その辺にある木のどれもが木工品に適しているわけでは無いということを覚えている。ケヤキ、トチノキなどが家具材として、シナノキやサクラなどが小木工に、スギ、ヒノキ、サワラなどが建材に好まれるということを、だいたいであるが、覚えている。
 キリも家具材として有名である。キリが用いられるのは主にタンスのようである。キリには防虫効果があるらしいのでタンス、ということだと覚えている。材が軽く、加工しやすく、狂いが少ないということも理由らしい。

 そのキリとは、親戚でも何でも無いが、アブラギリ(油桐)と桐の名のつく木がある。アブラギリは沖縄で(少なくとも私は)見たこと無いが、同属のサンゴアブラギリは友人の家で、散歩の途中の民家の庭で見ている。初めてその存在を知ったのは、一昨年の八重山旅行で、竹富島を散策している時。民家の石垣の傍に数本あって、花を咲かせていた。小さな木。桐と名はついても、タンスの材になることはまず無かろう。

 サンゴアブラギリ(珊瑚油桐):鉢物・添景
 トウダイグサ科の常緑低木 中央アメリカ原産 方言名:なし
 名前の由来は、「花がサンゴに似ているので」、または、「花柄の形がサンゴに似ているところから」と別々の文献にあったが、本種の花の形や花柄の形に似ているサンゴを私は見たことがないので、ピンとこない。まあ、そういったサンゴがあるのだろう。アブラギリ(油桐)は同じトウダイグサ科ヤトロファ属の落葉高木。別名をその属名であるヤトロファと言い、園芸店の鉢物などではその名前をよく見る。
 高さは150センチほどにまでなるようだが、よく見かけるのは地植えでも50センチ程度のもの。葉は30センチほどと大きく、キリの葉に似ている。枝葉の数が少なく、徳利のような形をした幹が良く目立つ。徳利油桐なんて名前を私ならつけたい。
 枝先に花茎を伸ばし、小さな花がいくつもかたまってつく。開花期は5月から11月。

 竹富島の花

 沖縄産

 沖縄産の花

 ちなみに、
 アブラギリ(油桐)
 トウダイグサ科の落葉高木
 キリに似た大きな葉をつける。花色は白、初夏に開花する。
 ちなみにキリは別科で、見た目もぜんぜん違う。材が似ているとのこと。

 キリ(桐)
 ゴマノハグサ科の落葉高木 中国原産
 ゴマノハグサ科では唯一の木本性とのこと。タンスの材として有名。
 記:島乃ガジ丸 2007.4.14  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
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