オオデマリ
 私が中学生の頃だったか、ベランダで寝ていた父が病院行きとなった。父は上半身裸で寝ていて、虫に刺されたとのこと。正確には「刺された」のでは無く、体に付いた虫を手で叩き潰し、毒の含まれたその虫の体液にやられたのであった。病院から帰った父の体を見ると、上半身にたくさんの蚯蚓腫れが這っていた。
 父を病院行きにした虫はアオバアリガタハネカクシ、その名前を少年は覚えた。「世の中には恐ろしい虫もいるもんだ」と強く印象に残ったのであった。

 強い印象もあったが、名前がまた、覚えやすい。青い翅で、蟻の形をしていて、翅が隠れている虫の仲間だ。名前からその形も何となく想像できる。昆虫にはそのような覚えやすい名前を持ったものが多くあるが、植物にもそのようなものがある。
 クンショウギク、ケイトウ、ササウチワ、ナガボソウ、ボタンウキクサ、セイタカアワダチソウなどなど、その形が名前から思い浮かぶ。

 今回紹介するオオデマリも覚えやすい。コデマリは小さな手鞠と覚えられたし、コデマリに対するオオデマリと想像し、花房がコデマリより大きいものと想像できる。ではあるが、名前の風情としては、オオデマリの別名と文献にあったテマリバナ(手鞠花)の方がイイ感じを受ける。正月に毬をついている美少女を想像する。

 オオデマリ(大手鞠):添景・鉢物
 スイカズラ科の落葉低木 ヤブデマリの園芸品種 方言名:なし
 名前の由来、資料は無いが容易に想像はつく。花房が大きく球形で大きな手鞠のようだから、だと思われる。別名テマリバナ(手鞠花)と文献にあるが、広辞苑ではテマリバナが本名でオオデマリはその異称とある。私の好みは手鞠花、何か風情がある。
 既にこのガジ丸HPでも紹介済みだが、コデマリという名の落葉低木もある。小手鞠と書き、鞠のような小さな花房をつけることからその名がある。大と小の違いだが、コデマリはしかし、バラ科。また、本種によく似たアジサイはユキノシタ科。
 高さは2〜3mほどになる。花は多く集まって房状となり、径20センチほどの球形となる。色は始め淡緑色で、開くにつれて純白となる。開花期は、倭国では4から5月とあるが、沖縄では3月から咲いている。なお、本種の基本種であるヤブデマリは中国原産。当然ながら本種と同じスイカズラ科で、同じく落葉低木。

 花
 記:島乃ガジ丸 2013.1.8  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
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 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行
 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行
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