ナガミボチョウジ
 私が時々散歩に出かける末吉公園は那覇市首里末吉にあり、沖縄島南部の原生林が残っている。そんな林の中、左右に木立の茂った園路を、足元を見ながら歩いていると、ところどころで赤い実に気付く。その赤い実を付けた樹木はナガミボチョウジ。
 それがナガミボチョウジであると知ったのは1年以上も前のことだが、図鑑を見ると、ボチョウジも沖縄島に自生しているとのこと。ならば、ナガミボチョウジとボチョウジ、一緒に紹介しようと思って、その後何度も末吉公園を散策してボチョウジを探した。しかし、発見できずにいた。1年も経って、図鑑を確認する。
 『沖縄四季の花木』に、ナガミボチョウジは「石灰岩地域の山林に多く・・・ボチョウジは非石灰岩地域に生える」とあった。
 沖縄島は、2つの土質に大きく分けられる。中北部は酸性土、南部は弱アルカリ土、弱アルカリ土の地域は石灰岩地域とも呼ばれる。どうやら、ボチョウジは石灰岩地域である沖縄島南部には自生していないらしい。末吉公園をいくら散策しても見つからないわけであった。最初にボチョウジを図鑑で見たとき、その説明文もちゃんと読んでおけば良かったのだが、大雑把という私の性格は、図鑑を見る際も発揮される。

 ナガミボチョウジ(長実母丁字):添景
 アカネ科の常緑低木 九州南部以南、南西諸島、台湾などに分布 方言名:アザカ
 ボチョウジが広辞苑にあった。母丁字と書くが、意味は不詳。チョウジ(丁字)はフトモモ科の常緑高木。本種とボチョウジは同属の近縁種、ボチョウジの果実に比べ本種の果実が長いことからナガミと付く。なお、白い玉のシラタマカズラも同属。
 別名をリュウキュウアオキというが、アオキはミズキ科の常緑低木。本種がアオキに似ているかどうかは不詳。ただ、花が小さいこと、果実が赤く熟すること、そして、樹林の足元の主たる低木という点では似ている。
 高さは1〜2m。石灰岩地域、森林の樹下に自生する。そのような場所である末吉公園ではギョクシンカと共に、山地の樹下に見られる主たる低木となっている。
 枝先に花序を伸ばし十数個の花をつける。白色で小さく目立たない。開花期についての資料は無いが、私の経験では5月から7月。楕円形の果実は1センチ内外あり、秋になると赤く熟して目立つ。祭祀用に用いられる。ちなみに学名、
 ボチョウジ Psychotria rubra Poir.
 ナガミボチョウジ Psychotria manillensis Bartl.
 シラタマカズラ Psychotria serpens L.

 花

 実
 記:島乃ガジ丸 2008.11.15  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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