コダチヤハズカズラ
 毎週金曜日だけの職場は、何年か前までは私がやるべき仕事も、仕事として十分にあったのだが、今は業務縮小して、私の仕事はほとんど無い。無いが、出勤している。暇なのを幸いにと、趣味であるガジ丸HP作りに、その1日のほとんどの時間を使っている。
 その職場の近くに宜野湾市役所がある。市役所には銀行のATMがあって、以前は金をおろしに月に一回はそこへ行っていた。
 職場は市役所の裏手にあって、市役所へはたいてい裏門から入る。裏門手前の左手の花壇には紫色の朝顔みたいな花をつける木がある。私もよく知っている木、名前をコダチヤハズカズラという。コダチ(木立)でカズラ(葛)というややこしい名。
 ややこしいというのは、たとえば、四角い三角定規とか、赤い白木蓮とか、大きな小箱とかいった矛盾する表現が、コダチとカズラの間にはあるからだ。コダチ(木立)というのは、ケヤキやらクスノキやらといった幹のしっかりしたもの、カズラ(葛)はツル性の、幹のはっきりしないものをいう。したがって、コダチとカズラが名前にあるということは、その植物が、幹のはっきりしない幹のしっかりしたものであるという表現となる。ややこしい。
 ややこしいのではあるが、ウチナーンチュ(沖縄人)らしくテーゲー(大概)で考えるとややこしくはなくなる。元に三角という名の定規があって、それが四角い。元に白木蓮という植物があって、それが赤い。元に小箱という箱があって、それが大きい。・・・などと同じ考えで、元にヤハズカズラというツル性の植物があって、それが木立性になっているもの、と思えば実に簡単なこと。そして、実際に、コダチヤハズカズラはそうなのである。
 矛盾なんてのは、ある一方向から見たらそうなのであって、別の角度から見れば矛盾でなくなる場合もある。平和を祈願して靖国を参拝する気持ちが、別の方向から見れば、戦犯を称えているようにも見える。コダチヤハズカズラの名前から、そんなことまで思いが至った。

 コダチヤハズカズラ(木立矢筈蔓):添景・生垣
 キツネノマゴ科の常緑低木 原産分布は熱帯西アフリカ 方言名:無し
 コダチ(木立)とあるからには木立でないものもある。園芸店でよく見かけるツンベルギアがそうであるようにコダチの付かないヤハズカズラはつる性の植物で花色は黄色。
 園芸店ではしかし、このコダチヤハズカズラもツンベルギアという名で売られている。こっちの方はその名の通り木立性。花はアサガオのような形の青、黄、白の三色模様。いっぺんにたくさんの花をつけることは少ないが、年中ちらほらと咲いている。
 高さ1〜2mに止まり、分枝力が強く、強剪定に耐えるので、低木生垣に向く。ただ、日陰に置くと花つきが悪くなるので、よく日の当る場所を選ぶ。
 ちょっとややこしいが、コダチヤハズカズラがヤハズカズラ属で、ヤハズカズラはツンベルギア属。兄弟とは言っても、庭での使い方は違うので区別しておく。

 白花種

 白花種の花
 記:島乃ガジ丸 2005.5.28  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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