コバノミヤマノボタン
 ヤマトゥンチュ(大和人)のくせに沖縄の植物や焼き物が好きだというT女史は、東京の高円寺で工芸雑貨店を経営しており、今年(2011年)7月の下旬、読谷の「やちむんの里」でやちむん(焼き物:主に食器)を仕入れる目的で来沖した。
 ヤマトゥンチュのくせに沖縄の民俗文化に関心があり、その著作もある東京在のIY氏に紹介されて、T女史の滞在中のお世話をすることになった。「焼き物が好き」については私もまぁまぁ好き、「植物が好き」については私も大いに好きなので、2日間、運転手を兼ねて彼女に付き合ったが、もちろん、その間ちっとも退屈しなかった。
 「やちむんの里」でやちむんを仕入れるのがT女史の、来沖の第一の目的で、観葉植物のナーセリー(苗畑という意味らしい)見学が第二の目的で、ヤンバルの山を散策したいというのが第三の目的。第一、第二は取りあえず置いといて、

 ヤンバルの山散策は往復約3時間で済ませた。真夏の山歩きはきつい。うっかりすると熱中症になる。下手すると、疲れのあまり夜の酒が飲めなくなる。で、適度に疲れた辺りで切り上げたわけ。セマルハコガメに会えなかったのは残念であったが、その代わり、いくつかの珍しい植物に出会えた。T女史も満足したと思われる。
 いくつかの珍しい植物の内、与那覇岳入口で見つけたのがコバノミヤマノボタン。最初からそれであると判ったわけでは無い。ノボタンの類であろうとは想像できたが、見知らぬ植物であった。写真を撮って後日調べて判った。
 文献によるとコバノミヤマノボタン、なかなか珍しい植物のようで、出会えたことはラッキーだったようだ。ちょうど花の時期であったことも重ねてラッキーだった。

 コバノミヤマノボタン(小葉深山野牡丹):添景・鉢物
 ノボタン科の常緑低木 沖縄島北部に分布 方言名:なし
 名前の由来は資料が無く正確なところは不明だが、ノボタンに比べて葉が小さいのでコバ(小葉)、山地に生息するのでミヤマ(深山)、ノボタン科なのでノボタン(野牡丹)であろうと、その名前から容易に想像が付く。
 ノボタン科であるが、ノボタン属では無くハシカンボク属に属する。ノボタンは花弁が5枚であるが、ハシカンボクと本種は4枚と違いがある。
 高さは1mほど。花は清楚で美しく、庭の飾りに適しているが、現在では自生の数も少なくなってきており、絶滅危惧種にもなっているらしい。沖縄島の固有種で、北部の山地にのみ生育するとのこと。ヤンバルの山で細々と生きている可憐な美女のようなもの、そこで絶えることが無いよう、そっとしておきましょう。
 花は淡紅色と文献にあり、文献の写真はその通りなのだが、私が見たものは淡紫といった方が近い個体だった。個体によって多少の違いがあるのだろう。ノボタンよりはずっと小さく、ハシカンボクよりはちょっと大きめの花、開花期は6月から7月。

 花
 記:島乃ガジ丸 2011.8.5  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
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