ゲッキツ
 高校時代の友人Mは5階建てのビルの持ち主で、4階に母親、本人とその家族は5階に住んでいる。屋上は一部、庭園になっている。その屋上庭園で、夕日を眺めながらビールを飲んでいたら、どこやらか甘い匂いが漂ってくる。辺りを見回すと、植えた覚えの無い木がいつのまにか育っていて、白い花を咲かせていた。その花が匂いを出しているようなんだが、何の木だろう、と訊く。見に行かずとも、それが何であるか想像はついた。
 シマグワの項で、「鳥によって種が運ばれてナンクルミー(自然に芽生える)する植物は、他に、ゲットウ、ハリツルマサキ、ゲッキツ、ヒカンザクラ、アカギなど」と書いたが、Mの屋上にナンクルミーした良い香りの白い花を咲かす植物はこの中にある。ゲッキツである。実際見に行くと、私の予想は正しかった(いばるほどのことではない)。
 屋上にはゲッキツの他に、ゲットウ、ハリツルマサキもナンクルミーしていた。土の量が限られている屋上庭園では、シマグワ、アカギ、ヒカンザクラなどの高木は向かない。ゲットウは草本類で高くはならないが、株がどんどん増えて煩くなるので、これも狭い屋上の花壇には向かない。が、ハリツルマサキとゲッキツは、あまり大きくならず、強い剪定にも耐えるので屋上庭園向きの樹木だ。良い庭木を只で手に入れたということになる。
 ところが、それら以外に、風によって運ばれた種が芽生えてナンクルミーした雑草の方が、彼の屋上庭園の面積をはるかに多く占めていた。その除草作業には、只で入手したハリツルマサキとゲッキツの代金よりもずっと多くの費用がかかると思われた。

 ゲッキツ(月橘):庭木・生垣・盆栽
 ミカン科の常緑中低木 国内では奄美以南に分布する 方言名:ギギチャー、他
 中国では七里香とか十里香とも言うらしい。漢字の月橘は、月夜に柑橘の香を強く出すからと文献にある。花期は5月から10月と長い。首里にはあちこちに街路樹として用いられていて、散歩しているとその香りにすぐ気付く。夜は特に強く香る。
 造園木としては低木に分類されていて、実際、刈込みや生垣など低めの植栽に用いられることが多い。が、高さ3mくらいにはなるので、段造りの添景木としても使われる。
 別名イヌツゲとも言い、材が緻密で堅く、印鑑や櫛として用いられたらしい。

 花
 記:島乃ガジ丸 2004.9.27  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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