ボチョウジ
 もう一年ばかりご無沙汰しているが、首里に住んでいた頃、首里末吉にある末吉公園へよく通っていた。末吉公園は沖縄島南部の原生林を残しており、植物も動物もさまざまな種類が豊富にいた。あの天然記念物コノハチョウもそこで私は見つけた。

 秋頃、その末吉公園を散策すると、赤い実の目立つ植物が樹林の下に多く見られる。写真を撮って調べるとナガミボチョウジであることが判明。ところが、図鑑にはその隣のページに近縁種としてボチョウジも紹介されている。「どっちかなぁ」としばし悩んだが、ナガミという名の通りナガミボチョウジの実は長楕円形でボチョウジの実は円形ということで、末吉公園で撮ったのはやはりナガミボチョウジだと断定できた。
 そしてその後、末吉公園に行くたびに「ボチョウジはいないか」と気をつけていたのだが、何年経ってもついに円形の赤い実には出会えなかった。

 ナガミボチョウジの記事を書いたのは2008年、写真はそれより前に撮ってある。記事を書いている時に「ナガミボチョウジは石灰岩地に多く、ボチョウジは非石灰岩地域の山地に生息する」ことを知る。で、石灰岩地域である末吉公園ではいくら探してもボチョウジを見つけることができなかったわけ。ボチョウジを見つけたのは昨年(2011年)の秋、石垣島で。石垣島も沖縄島北部と同じ赤土土壌の非石灰岩地域である。

 ボチョウジ(母丁字):祭祀用
 アカネ科の常緑低木 屋久島、種子島以南、南西諸島などに分布 方言名:アサカ
 ボチョウジが広辞苑にあり、母丁字と字が充てられているが、名前の由来は不明。チョウジ(丁字)はフトモモ科の常緑高木。その母とはいったい???
 同属のナガミボチョウジと共に別名をリュウキュウアオキという。南西諸島に分布するのでリュウキュウは解るが、アオキはミズキ科の常緑低木で、その関係は不詳。
 ナガミボチョウジは石灰岩地に多く、本種は非石灰岩地域の山地に生息する。なので、ナガミボチョウジは石灰岩地である那覇市の末吉公園で見られたが、本種は非石灰岩地域であるヤンバル(沖縄島北部)に多いとのこと。私が見たのは石垣島の山地。
 夏に黄緑色の花が咲くが、小さく目立たない。果実の方が目立つ。同属のナガミボチョウジは果実が長球形だが、本種は球形。径5〜6ミリで、ナガミボチョウジと同様、緑から黄になり、秋に赤く熟する。同じく同属のシラタマカズラは球形だが白い玉。
 ちなみにそれぞれの学名は、
 ボチョウジ Psychotria rubra Poir.
 ナガミボチョウジ Psychotria manillensis Bartl.
 シラタマカズラ Psychotria serpens L.

 実
 記:島乃ガジ丸 2012.12.18  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行
 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行
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