アデニューム
 父が留守の間、週一で実家の面倒を見に行っていた。窓を開け部屋の空気を入れ替えることと、たくさんある鉢物に水を遣るのが主な作業。窓を開けるのは特に難儀なことでは無い。鉢物への水遣りが大変。特に屋上には5、60鉢あって、きつい仕事となる。
 夏の一ヶ月ほど義兄が実家にいて、彼が水遣りをやっていた。聞けば、「ホースを伸ばしてバーっとかければ15分で済むよ。」と言う。私は大きなポリ容器に水を溜めて、柄杓で少しずつやっていたものだから彼の倍以上の時間がかかっていた。
 ホースでの水遣りには欠点がある。さっとかけると、鉢物の場合中まで水が浸透しないということと、泥が撥ねて床が汚れるということと、歩いている人に水がかかってしまう恐れがあるということだ。なので、私は柄杓でゆっくりとかけていた。コンクリート床の屋上、炎天下では30分以上もいると汗だくになる。「どうでもいいような鉢物、こんないっぱい置きやがって親父の奴。」と少々腹を立てながらかけていた。

 全くどうでもいいような植物が多くある。「これはあってもいいな」と私の感性が思うようなものは10鉢ほどしかない。その10鉢の中でも特に目立って良い物が一つ、樹姿良く、花もきれいで良く咲かせてくれる植物。アデニューム。

 アデニューム(Adenium):添景・鉢物
 キョウチクトウ科の落葉低木 アラビア〜東アフリカに分布 方言名:なし
 学名はAdenium obesum Balf.で、和名のアデニュームはその属名から。別名を砂漠のバラと言うが、これは英名のDesert roseから。『沖縄の都市緑化植物図鑑』に「乾燥地に自生するから英名でデザートローズと呼ばれている」とあった。
 葉は特に厚い(ガジュマル位)というほどでは無いが、茎がモコモコとした感じで、いかにも乾燥に強そうな多肉植物という雰囲気がある。
 高さは1m程度、多数分枝し、横に広がる。葉は濃い緑色をし、光沢がある。乾燥期に落葉する。花は枝の先端に数個ずつつけ、色は桃色を多く見かけるが、実生によって変異があり、赤や、白の混ざったものもあるとのこと。開花期は周年。
 鉢物に多く利用されているが、露地栽培も可能である。こじんまりと自然に整った樹形になり、きれいな花を周年見せてくれるので、庭の添景に使い良い。
 陽光、排水良好、高温、乾燥を好む。切り口から腐朽しやすく、強風に弱い。

 花
 記:島乃ガジ丸 2008.10.9  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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