ショウロウクサギ
 友人Hの店の近くに浦添大公園という、その名の通り大きな公園がある。Hの店にたびたびお邪魔している私は、そのついでに、浦添大公園をたまに散歩している。
 私の住まいや職場の近くでは見ない木が、浦添大公園に多くある。その木は、白い花を枝先に固まって多く咲かせる。その花は3センチほどの大きさ、花弁は細めで五弁、雄しべ雌しべが長く前方に突き出している、鼻を近づけると良い香りがする、などなどと特徴があって、調べればすぐに何物か判明するものと思われた。
 写真を撮って文献を調べるとショウロウクサギに似ている。ところが、ショウロウクサギの開花期は7月から8月となっている。私が花を見たのは11月、違うかもしれないと思って、紹介は保留。翌年の夏、同じ花を見る。「おー、やはり、ショウロウクサギであったか、11月のはたまたま狂い咲きだったのであろう。」と思った。のであるが、
 別の文献を調べるとアマクサギというのがあって、これも浦添大公園にあるものとよく似ている。文献の、ショウロウクサギの写真とアマクサギの写真を見比べても、両者の違いが全く判らない。さらに別の文献では、ショウロウクサギの開花期を9月から11月としている。去年見た花は6月のものである。わけが分らなくなる。
 ただ、ショウロウクサギの葉には毛があり、アマクサギの葉にはほとんど毛が無いという記述があったので、先週、浦添大公園へ行き、該当の木の葉を数枚、手で撫でてみる。どれも少しざらっとした。毛があるようだ。よって、ショウロウクサギと判断した。

 ショウロウクサギ(しょうろう臭木):添景
 クマツヅラ科の落葉中木 四国以南に分布 方言名:クサジ、クサジナ
 クサギ(臭木)は日本全国(他に朝鮮、中国など)に分布する同じクマツヅラ科の落葉中木で、本種はその変種となっている。アマクサギも同じくクサギの変種。クサギは参考にしている文献を見る限り、沖縄には自生していないようである。
 クサギは、その葉が臭いということからその名前となっている。本種はそういうほど臭くは無いが、兄弟ということでクサギ。ショウロウについては資料が無く、その由来は不明。花の形が似ているから鐘楼(かねつき堂)なのか、葉は臭いが、花は甘い匂いがするから娼楼(女郎屋)なのか、などと想像するが、根拠は全く無い。
 方言名のクサジはクサギの沖縄読み。クサジナのナは菜っ葉の菜、葉は食用になる。
 高さは2〜5m。白色で芳香のある小さな花は葉のつけ根や枝先に花序となって咲く。開花期は、文献によって7月から8月、9月から11月などとあるが、私の経験では6月から11月。「果実は球形で青熟し、紅色の顎の上につく。」と文献にあったが、私の経験では、紅色の顎では無かった。果実は球形で青黒く熟していた。
 学名、
 クサギ:Clerodendrum trichotomum
 ショウロウクサギ:C. trichotomum var. esculentum
 アマクサギ:C. trichotomum var. yakusimensis
 同属には他に、
 ヒギリ:C. japonicum 、東南アジア原産の常緑低木
 ゲンペイクサギ:C. thomsoniae 、アフリカ原産の常緑ツル性木本
などがある。

 花

 実
 記:島乃ガジ丸 2007.10.6  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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