シンノウヤシ
 南の島といえば椰子の木で、それはその通り、椰子の木は南方出身のものが多く、沖縄にも街路樹や公園に、たくさんの椰子の木が植えられている。それらの椰子の木は、南の島の雰囲気を形成するのに大きく役立っている。
 というわけで、身近に椰子の木は多くある。なので、このガジ丸HPでも既に12種類の椰子の木を紹介している。ところが、『沖縄の草木』のページで紹介済みの椰子の木が何種類あるか数えていて、「何てこった!」ということに気付いた。
 身近にたくさんある椰子の木のうち、最も親しみのある椰子の木がまだ紹介されていないのだ。親しみのある椰子は数種あるが、すでに紹介してある12種類のヤシの中ではココヤシだけである。あとは、このHPを始めてから知ったものばかりだ。

 親しみのあるヤシとはアレカヤシ、トックリヤシ、シンノウヤシである。ココヤシを含めて、これらは若い頃からその存在と名前を知っていた。その中でも、シンノウヤシは別名のフェニックスという名前でよく知っていた。フェニックス→火の鳥である。火の鳥は手塚治虫の『火の鳥』である。シンノウヤシはまた、見た目でも他のヤシとの違いが判りやすかった。葉の色が濃く、幹の凸凹も特徴的であった。
 今週はそのシンノウヤシを紹介する。今週からしばらくはヤシの紹介が続く予定。

 シンノウヤシ(神農椰子):公園・添景
 ヤシ科の常緑中木 インドシナ原産 方言名:なし
 神農椰子という字が文献にあったが、何故、神農なのかは不明。神農は広辞苑にあり、「中国古伝説上の帝王。・・・人身牛首、民に耕作を教えた。」とある。体が人間で、顔が牛という農業の神様と本種がどう結びつくのか推測できない。
 ただ、広辞苑の続きに、「五行の火の徳を以て王となったために炎帝という。」ともあった。火の神様から火の鳥は連想できる。火の鳥はフェニックスと西洋では言う。本種の学名はフェニックス(属名)である。そんなところから神農なのかもしれない。
 シンノウヤシという名前よりも、属名のフェニックス、あるいは、種名のロベとかの方が有名かもしれない。園芸店ではその名前で、鉢物として売られている。
 高さは3mほど。こじんまりとしたヤシなので民家の庭にも使える。陽光地を好むが、耐陰性がごく強いので、室内の観葉植物にも向く。葉の根元に鋭い棘があるので、剪定の際には注意が必要。また、あまり風当たりが強い場所にあると、葉が痛む。
 花色はクリーム色、開花期は3月から7月。タイワンカブトムシの食害を受ける。

 花
 記:島乃ガジ丸 2008.3.29  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
inserted by FC2 system