クスノハガシワ
 一月の第三日曜日(18日)、従姉の別荘で花見があった。花見といっても、桜ではなく、梅。梅が見事に咲いていた。気候が合わないのか、沖縄に梅の花は珍しい。沖縄で梅の花を見たのは、少なくともそれが梅だと知って見たのは私は初めてのこと。
 ということで、私にとって梅といえば、花よりも梅干となる。梅干は私が物心ついた頃から傍にあり、今でも冷蔵庫の中にたいてい置いてある。子供の頃の梅干は真っ赤であった。なので、私は長い間、梅の実は真っ赤な色をしていると思っていた。そうでないと知ったのは、東京で暮らしている頃、梅酒の梅を見てからだ。

 赤い実と言えば、センリョウ、マンリョウ、ナンテンなどが有名だが、サンゴジュの実も見事な赤色をしている。モノレール首里駅下の中央分離帯にあるサンゴジュが、その季節になると真っ赤に染まる。「おーっ!」と声が出るくらい見事である。去年、それに気付いたのだが、残念ながら、運転中だったので写真は撮れなかった。

 もう一つ、赤では無く、朱色とか橙色と言った方がいいのだが、去年の春に目立つ色の実を付けた木を見つけ、写真を撮っている。それは浦添城跡公園にあり、首里の、私の散歩道の途中にもあった。目立つ実は文献にも写真があった。クスノハガシワ。
 その文献の説明には、「果実は7月から9月に熟す」とあり、私が見たのは5月だったので、もしかしたら違う植物かもしれないと思い、紹介を躊躇していたのだが、写真の実の色形は、クスノハガシワ以外に該当するものが見当たらない。

 クスノハガシワ(楠の葉柏):添景
 トウダイグサ科の常緑中木 奄美以南の琉球列島、他に分布 方言名:アカマミク
 「葉がクスノキに似ているからこの名」と文献にあった。クスノキの葉と本種を並べて見比べてはいないが、写真で見る限りでは似ている。カシワについては、柏という落葉高木がある(沖縄には自生しない)が、ブナ科なので本種とは関係ない。「かしわ」を広辞苑で引くと、「食物や酒を盛った木の葉。また、食器。」の意味もある。本種の葉が柏餅の葉のような使い方をされたのかもしれない。正確なことは不明。
 トカラ列島以南、琉球列島、台湾、インド、フィリピン、オーストラリアなどに広く分布し、石灰岩地帯に見られる。高さは4〜8mで、民家の庭の添景に使える。
 枝の先、葉脇から穂状花序を出し、小さな花を多くつける。花色は白で、開花期は3月から4月。その花よりも果実が赤〜朱色でよく目立つ。果実は球形で、7月から9月に熟す。小枝、若葉などには褐色の短い毛がある。アカメガシワと同属。

 花

 実
 記:島乃ガジ丸 2009.1.23  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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