コクテンギ
 最初に見たのは2006年5月、近所のスーパーの駐車場で。色は目立たないが四片の花弁が互いに隙間を空けて開いている形が面白く、写真を撮った。
 それからほぼ四年が過ぎた今年の二月、北中城(きたなかぐすく)の若松公園を散策していると、四年前に見たのと同じような花を見つけた。じつは、その間にも2、3度、嘉数高台公園で見ている。嘉数高台公園では2008年6月に、花が終わった後の果実も見ている。花も特徴のある形だったが、果実も面白い形をしていた。
 花と実に特徴がありながら、長い間その正体が不明だったのは、私が参考にしている文献の多くにその記載が無く、コクテンギという名前も聞いたことが無かったから。
 参考文献の一つ、『琉球弧野山の花』は、紹介されている植物の種類は多いが、写真が小さく、文字も小さい。老眼でありながら老眼鏡をかけるのを面倒臭がっている私は、その本を読む機会が少ない。けれども先日、その本を最初からじっくりとページを捲ってみた。そして見つけた。そうだ、この花だ。果実の説明もその通り。

 コクテンギ(こくてん木):添景
 ニシキギ科の常緑高木 九州南部以南、南西諸島、台湾などに分布 方言名:不詳
 名前の由来は資料が無く、不明。別名にクロトチュウとあるが、これも不明。何かが黒いからコクとかクロとか付くのかも知れないが、花も実も黒くは無い。方言名のズリグヮギはおそらく、尾類(ジュリと読む、娼妓のこと)小木と思われる。小は可愛いものといった意味の接尾語で、可愛らしい娼妓のような木となる。この木のどこが可愛らしい娼妓なのかと問われても、答えられないので、正解かどうかについての自信は無い。
 文献によって、常緑小高木、常緑低木、落葉低木などとまちまち。私の判断で常緑中木とした。落葉しているのを見ていない。紅葉するともあったが、それも見ていない。
 高さについても5〜6mとあったり、10mとあったりする。私が見たものはせいぜい5〜6m。海に近い山地に自生とあったが、私はあちらこちらで見ている。海に近い場所、遠い(沖縄のことなので遠いと言っても多寡が知れているが)場所、山地でも、街中でも見ている。自生地が「海に近い山地」だということなのであろう。
 花ははっきりとした4弁、淡緑色で、開花期は2月から5月。果実も4つの稜が明瞭で特徴のある形、結実期は6月から7月。学名は Euonymus tanakae Maxim.

 花

 実
 記:島乃ガジ丸 2010.5.20  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
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