カイヅカイブキ
 「スギ花粉は例年よりも多く発生」は花粉症の人にとって嫌なニュースであろうが、私は花粉症の経験が無いので、その辛さが解らない。元より、沖縄には花粉症が無い。と断定するのは言い過ぎかもしれないが、少なくとも私の周囲では聞かない。むしろ、酷い花粉症だった人が沖縄に住むようになってから治ったという話はいくつか聞いている。
 樹木はあちこちにいっぱいあるので花粉が無い、ということは無いであろうが、花粉症の主な原因となっている杉の花粉はほとんど無い。杉の木そのものがほとんど無いのだ。

 旅をして、本土の山道を歩いていると杉林、檜林に必ず出くわす。真っ直ぐ天に伸びた杉や檜の立ち並ぶ姿は、沖縄には無い景色なので、いかにも異境の地に来ているという雰囲気が味わえる。沖縄の山の景色は、主にイタジイ、オキナワウラジロガシ、マテバシイ、イスノキ、タブノキ、エゴノキ、ウラジロガシ、コバンモチ、フカノキ、ヒメサザンカ、ヤブツバキ、ヤブニッケイ、イジュなどの亜熱帯照葉樹林の景色となっている。
 『新緑化樹木のしおり』、『沖縄の都市緑化植物図鑑』などの本の中にもスギの類は載っていない。コバノナンヨウスギ(既に紹介済み)という樹木があるが、これはナンヨウスギ科。ヒノキ科にはいくつかあって、カイヅカイブキ、コノテガシワ、オキナワハイネズ、ハイビャクシンなどが載っている。どうやら針葉樹そのものが少ないようである。
 今挙げたヒノキ科の樹木の内、沖縄の庭で最も多く使われているのはカイヅカイブキ。特に目隠しの生垣として重宝がられている。庭木としてカイヅカイブキは有名なのだが、カイヅカイブキは、イブキ(ビャクシンとも言う)を品種改良したものらしい。

 倭の国で今猛威をふるっている花粉、あちこちの公園や民家に多く植えられているカイヅカイブキからも出ているはず。だが、その花粉量がたいしたこと無いせいか、アレルギーを起こすまでには至っていない。また、花粉症が他の針葉樹とは関係なくて、杉の単独犯であるならば、杉の無い沖縄には花粉症が発生しない。この時期、「花粉症逃れに長期滞在型沖縄観光はいかが」という旅行商品は売れないだろうか。県知事、どうです。
 ヤンバルの山深く、谷になっているようなところには杉の木があるらしいってことを聞いている。琉球大学のキャンパスにも杉の木があるらしい。どちらも未確認だが。

 カイヅカイブキ(貝塚伊吹):添景・生垣
 ヒノキ科の常緑高木 原産分布は北海道南部から沖縄、中国等 方言名:無し
 イブキの一品種。高さ10mまでになり、成長も早いので庭木、それも主木に含めるのを躊躇したが、刈込みが容易で生垣はむろん、段作りもできるため、庭手入れに時間と金をかけられる家なら十分に主木の役を果たすことができる。
 陽光地を好む植物で、塀沿いに生垣として植栽した場合、塀側の常に陰になる部分の枝葉が枯れているのをよく見かける。塀沿いに生垣する場合は塀から離した方が良い。

 実

 仕立物
 記:2005.2.11 島乃ガジ丸  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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