心を分ける
 「来月か再来月になるかね、マナの軌道修正は。」と、ウフオバーが気になることを言ってから4、5日が過ぎた。が、そのことに関して、マナはまだ、はっきりしたことは何も言わない。言わないが、でも、何となく認知されたみたいになっている。
 俺も、「まあいいか」という気分でいたのだが、酒飲んで、つい、
 「オメェよ。結婚するのか?」と、直球を投げてしまった。ゑんちゅ小僧が驚いたように俺の顔を見たが、マナは意外にもその直球に、素直に応じた。
 「結婚?・・・さあ、どうだかね。あまり拘っていないんだ。形には。」
 「ほほう、男と女がイタスことをイタシていれば、それで幸せってか?」
 「バーカ、そんなんじゃないよ。気にかけて貰ってるっていう気分がいいのさ。」
 「そうだよー、」とウフオバーがニコッと笑う。「気にかけたり、気にかけて貰ったりするのが大事さあ。『心に人を住まわせる』って言葉があるけどね、ジラースーの心の中にはいつもマナがいて、マナの心にはいつもジラースーがいるわけさあ。そういうことがね、人生の幸せだとオバーは思うさあ。」
 「相手に心を分けるってことだね。」とゑんちゅ小僧が、今日も分別臭い。
   −−−ある日のユクレー屋の情景−−− 
語り:ケダマン 2008.2.29  次のケダマン 前のケダマン 最初のケダマン ユクレー島
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