冷や汗ツーリング
 「ケダーっ、ちょっと付き合ってー。」と外からマナが呼ぶ。
 「なんだ、」と俺は窓に近付いて、「どっか行くのか?」と訊く。マナは前にガジ丸に持ってきてもらった中型バイクに跨っている。
 「いい天気だからさ、ちょっとツーリングでもしようかと思ってさ。」
 「思ってさって、おめぇ、ろくに乗れねぇじゃないか。」
 「だから、練習するんだよ。一人だと何かあった時に怖いからね。」
 「俺は医者でもなけりゃ坊主でもない。何かあった時の役には立た無ぇぞ。」
 「縁起でもないこと言わないでよ。さー、後に乗って。」とマナはやる気満々だ。空は晴れて、風も心地良い。ツーリングにはもってこいの日だ。
 「たまには恐怖を味わってみるか。」と俺は後部シートに立ち、マナの体に掴まる。 
 「バカ!おっぱい掴むんじゃないよ!」
 「手が短いんだからそこにしか届かないんだ。しょうがねぇだろう。」
 「もういい!あんたは紐で結ぶことにするよ。」というわけで、俺は紐に結ばれての暢気なツーリング。マナは全身緊張の、冷や汗ツーリングとなった。
   −−−ある日のユクレー屋の情景−−−
語り:ケダマン 2007.12.21  次のケダマン 前のケダマン 最初のケダマン ユクレー島
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