魔王の魔
 久しぶりにモク魔王がユクレー屋にやってきた。入ってきて、「やあ」と手を上げ、カウンターの、俺の隣のゑんちゅ小僧の隣にドカッと腰掛けて、ビールを注文して、それをグビグビと腹に流し込んで、一息ついて、近況報告をひとしきり終えた後、
 「誰?」と、カウンターで俺たちの相手をしていたマナが訊く。
 「えっ、会ったことがなかったっけ。モク魔王だよ。」(ゑんちゅ)
 「魔王って悪魔の魔?悪魔の王様ってこと?グーダの親分?」
 「グーダって、あのグーダか?来るのか、ここに?」(モク魔王)
 「あー、最近、たまにやってくるよ。」(ゑんちゅ)
 「そうか、ヒマなんだろうな、怠けモンだからな、あいつ。」(モク魔王)
 「だからさあ、グーダとあんたとどういう関係なのさ?」
 「ん?グーダと私か?・・・魔という字は同じなんだが、何の関係も無いよ。分類学的に言えば、私はここにいるゑんちゅ小僧やケダマンと同じだ。実在した生き物が変化したものだ。グーダは違う。彼は人間の想念が形になったものだ。悪の想念だ。」
   −−−モク魔王が久々にやってきた日のユクレー屋の情景−−−
語り:ケダマン 2007.11.02  次のケダマン 前のケダマン 最初のケダマン ユクレー島
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