月の会社
 「あのさ、昨日、訊きたいことあったんだけど忘れてしまったさあ。本人に訊けば良かったのかもしれないけどさ、あんたたち知ってる?」
 「何だ?知ってることは知ってるぞ。」
 「昨日さ、マミナ先生がピアノを弾いて歌ったでしょ。それがウチナーグチの歌だったから意味が分らなくてさ、ちょっと気になったんだよね。」
 「ほう、どんな歌だったっけ?」
 「月の会社がどうこうっていう歌よ。」
 「あー、あれか、あれはだな、『いつか月にも会社ができる。最初にできる会社はミヤラビって名前のツーリスト会社という。』って内容の歌だ。」
 「へぇー、SFチックな歌なんだ。曲調からは想像できないなあ。」
 「違うよ。」とゑんちゅが口を出す。「『月ぬ美しゃ』っていう沖縄民謡だよ。月が美しいのは十三夜、女性が美しいのは十七歳って歌だよ。昨日が十三夜だったのさ。」
 「あー、なるほどね。晩秋の名月だったわけね。でも、十七歳は腹立つね。」
   −−−ある日のユクレー屋の情景−−−
語り:ケダマン 2007.10.26  次のケダマン 前のケダマン 最初のケダマン ユクレー島
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