屁こく三原則
 夏の昼下がり、ユクレー屋の裏庭にある物干し場にいた。突然、マナの声がした。
 「あんた、物干し竿にぶら下がって何してるの?」
 「うーん、虫干し。」と、俺はぶら下がったままマナの方に向きを代えて答える。
 「って、あんた、空をプカプカしていたら、それで虫干しになるんじゃないの?」
 「いや、ただ浮かんでいるだけではダメなんだ。時々、体を前後左右に揺すってやるのさ。体毛が前後左右に揺れるようにさ。」
 「あっ、そうか、毛の根元の体の表面まで風が届くようにってことね。」
 「それだけじゃないぞ。屁こく三原則って知ってるか?俺の場合、音を出さない、匂いを出さない、中身も出さない、ってこったが・・・。」
 「毛に覆われているから音は聞こえない、は分るけど、何で匂いも出ないの?」
 「屁の匂い成分が毛に付着するからなんだ。でも、こうやって体を揺すると毛から匂いが放出されるってわけだ。」
 「・・・うっ、臭っ。毛がこんなに臭かったら、三原則の意味無いじゃん。」
   −−−ある日のマナとの会話−−−
語り:ケダマン 2007.7.6  次のケダマン 前のケダマン 最初のケダマン ユクレー島
inserted by FC2 system