口に胼胝
 「ケダ!起きて!」とマナが怒鳴る。元気だ。恋煩いが治った証拠だ。
 「なんだ。良い天気だから散歩ってか。耳にタコができるほど聞いてるぜ。」
 「こっちこそ、ケダ起きろ!って言葉で口にタコができそうだよ。毎日毎日、朝遅くまでグズグズダラダラしてるんじゃないの、まったく。」
 「あーそうかい。口にタコができたかい。そりゃおめでとさん。ご馳走じゃねぇか。醤油でもぶっかけて、そのまま食っちまいな!」と、俺も大声を出す。目が覚めた。
 「バーカっ、あんたのは耳には蛸かしらないけど、私のは胼胝だよ。」
 「バーカっ、子供じゃねぇーんだ。蛸と胼胝の違いくらい判るわい。」
 「グダグダ言ってないで、さー、出かけるよ。ウフオバーの号令だ、逆らえないよ。」
 「出かけるって、どこに行くんだ?」
 「今、潮が引いてるんだって。タコ獲りに行くの。シガヤーが獲れるんだって。」
 「ほい、シガヤーか。俺の大好物だ。行こうぜ、獲ろうぜ、食おうぜ。」
 というわけで、その日はシガヤー(テナガダコ)獲りとなった。
   −−−ある日のマナとの会話−−−
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