こんな女に誰がした 4月のある日の昼下がり、空は青空、風はそよ風、陽射しも柔らかい。こんな気持ち良い日は、「ほれ、散歩。」と命令が下ったりするが、今日は平日なので、マナはユクレー屋の仕事がある。よって、散歩は無い。俺はのんびりできる。 で、その通り、のんびりしていたのだが、いつもなら台所で忙しく働いているはずのマナが、今日は珍しく、窓に頬杖付いて、ぼんやりと外の景色を眺めている。 「マナ。」と声をかけても反応しない。何か大人の雰囲気。俺は外に出て、外からマナのいる窓の傍へ行き、マナの顔を見に行った。「ほほう、これが物憂げか」と得心の行くような表情をマナは見せていた。悲しげな表情にも見えた。 「マナ、おめぇ大丈夫か?」と訊いたが、これにも反応は無い。眼差しは遠くを見ていて、俺の存在には気付かないみたいだ。恋する女みたいだ、と思っていたら、 「ジラースー」って呟いた。ジラースーって、おいおい、おめぇの相手はジラースーかよ。おめぇとは三十近い年の差だぜ、と俺は言いかけたが、マナの耳には届きそうに無かったので止めた。マナの物憂げは夕方まで続いた。 −−−ある日のマナとの情景−−− |
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