生きる力技 窓から温い春の風が入ってくる。まだ昼間だが、俺は酒を飲んでいる。 「平和だねぇー」と隣でコーヒーを飲んでいるマナがしんみり言う。 「でも、世界には戦争している国があるんだよね。なんでかねー。」と続ける。 「生きること以上のことをやろうとするから人類に争いは絶えないのさ。生きるのに技は少々必要だが、人類の多くは余分な幸せを望むから、力技で生きようとするんだな。力技通しがぶつかると争いになるんだな。」 「力技って、強引ってこと?弱肉強食ってこと?早い者勝ちってこと?」 「まあ、そういうことだな。」と、俺が答え終わらないうちに、マナが俺の皿に箸を伸ばし、最後の一口として残してあったものを自分の口に入れた。 「何しやがる!それは俺の肉だ!」 「えっ?1個だけ残してあるから食べないのかと思ったさあ。」 「俺は好きなものを最後に食べるタイプなんだ!返せ!コラ!」 「うるさい。早い者勝ちってことよ。」 −−−ある日のマナとの会話−−− |
語り:ケダマン 2007.5.4 次のケダマン 前のケダマン 最初のケダマン ユクレー島 |