時は風なり
 朝、いきなり体を揺り動かされる。毎度毎度のことだが、マナだ。この女、人使いが荒い。毎日一緒だと、さぞきつかろう。結婚した男の顔が見てみたい。
 「なんだ!まだ早いだろ!」とブツブツ言いながら起きる。逆らっても無駄なのだ。
 「良い天気なんだよ。」
 「あー、そのようだな。」と、(だから何っだってんだ)という思いを込めて言う。
 「だからさ、散歩に出るのさ。」
 「天気が良けりゃ、散歩なのかい?」
 「時は金なりって言うでしょ。この気持ちの良い時間を大事にしたいのさ。」
 「時は金?って、違うぜ。そんなもんじゃ無ぇぜ。まあ、喩えて言えば、時は風なりだぜ。泣いても笑っても淡々と流れていくだけのものだ。」
 「さー、ぐだぐだ言わないで。これを首に回して。」
 「なんだそれ、このあいだの犬のリードじゃないか。俺はまた、犬になるのか?」
 「違うよ。このあいだのより紐が長くて2本ついている。時は風なりでしょ。今日は良い風が吹いてるからね。風の時を楽しむのさ。空の散歩。」
   −−−ある日のマナとの会話−−−
語り:ケダマン 2007.4.13 次のケダマン 前のケダマン 最初のケダマン ユクレー島
inserted by FC2 system