魔性の血管
 歌を口ずさみながら、庭で洗濯物を干すユーナの手伝いをしていた。
 「ねぇ、さっき、歌っていた歌、何ていう歌?」とユーナが訊く。
 「えっ!知らないのか、有名な歌だぜ。『僕らはみんな生きている』って歌だ。」
 「違うよ。タイトルは『手の平を太陽に』だよ。」とそこへ、ゑんちゅ小僧がやってきて、言う。ガジ丸も一緒だった。
 「『手の平を太陽に』って言うんだ。いい歌だね。僕らはみんな生きているって、なんだか元気になる歌だね。」
 「おー、ユーナも手の平を太陽にかざせば真っ赤な血潮が見えるぜ。」
 「あー、ほんとだ。生きてるんだ。ねぇ、ガジ丸もやってみて。」
 「こいつらはダメだよ。魔性の血管に末梢の血管は無いんだ。血管の欠陥だ。」
 「えー、ほんと?真っ赤な血潮は無いの?」
 「うーん、無いな。太い血管は残っているが、末梢の血管は消えてるな。末端の細胞には皮膚呼吸で直接酸素を送っている。俺たちは切っても血は出ないんだ。」
   −−−ある日のユーナ、ガジ丸、ゑんちゅ小僧との会話−−−
語り:ケダマン 2007.1.26 次のケダマン 前のケダマン 最初のケダマン ユクレー島
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