海の噂
 「ケダマンって、あっちこっち旅してるんでしょ?」
 「うん、旅してるっていうか、漂っているな。」と答えつつ、何で解りきったことを訊くのかとユーナの顔を見たら、彼女は私からスーッと目を逸らして、
 「私のお父さんに会ったこと無い?」と訊く。
 「おう、やっとその話になったか。いつ訊いてくるかと思っていたが、俺と話するようになってもう半年以上もなるのに、よく我慢していたな。」
 「我慢していたわけじゃないよ・・・。」
 「んっ?・・・そうか。ちょっと怖かったか。」
 「怖いっていうかさ、悲しい話だったらなんか嫌だなあ、と思ってたのさ。」
 「オマエの父ちゃんのことはよく分らんが、面白い話は知ってるぜ。友達のイルカから聞いた話だがな。イルカは、本人から聞いたらしいがな。聞きたい?」
 「うん、聞きたい。話して。でもさ、ケダマンってイルカにも友達がいるの?」
 「おう、たくさんいるよ。会えばたいてい遊び相手になってるよ。ボール代わりにされているだけだが。」
 というような話があって、この後、ユーナに語って聞かせた物語がケダマン見聞録その2となった。「悲惨な死に方」という題。
   ―――ある日のユーナとの会話―――
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