ゼンモック
 久しぶりにユクレー屋に戻ってきた。俺が店の中へ入ると、カウンターにガジ丸が座っていて、その向かいにいつもと変わらぬユーナの可愛い顔があった。
 「あっ、ケダマンだ!」とユーナ。
 「やあ、ただいま。」と俺。
 「おう。」とガジ丸。奥にいたウフオバーがこっちを見て、にっこり笑った。
 「はっさもう、どこ行っていたのさ。」と再びユーナ。
 「何だか解らんが、気がついたらオオワシの巣の中にいたよ。夕方島に着いて、さっきまでシバイサー博士のところにいた。博士に、外でのんびりと寝られるようなものを作ってくれと頼んできた。毛を紐で結んだだけじゃ、またいつ切れるか分らないからな。オオワシの巣は臭かったよ。」
 それから二日後、注文したものを持ってシバイサー博士がユクレー屋にやってきた。博士が俺のために作ったものは、ハンモックが二つ、サンドイッチのようになっていて体を包むものであった。名前を聞くと、
 「ゼンモックだ。体全体を包むので全モックってことだ。カッ、カッ、カッ」とのこと。
   −−−オオワシの巣から戻ってきての会話−−−
語り:ケダマン 2006.9.15 次のケダマン 前のケダマン 最初のケダマン ユクレー島
inserted by FC2 system