マスターガジ丸
 ユイ姉、マナ、ユーナに加え、マミナも島から出て行って、ユクレー屋を手伝う女手がなくなってしまった。またもや俺とゑんちゅ小僧で、客と店員を代わりばんこでやらなきゃあならないのか、と思っていたら、今週初めからガジ丸がカウンターに立った。
 「どういうつもりなんだ?」
 「あー、お前とゑんちゅでは客が減るらしいからな。たまにはと思ってな。」と、月曜日にそう言って、以降昨日までの4日間、ユクレー屋のマスターはガジ丸となった。そして、言った通りに、客は俺たちの時よりはずっと増えた。
 「俺とお前じゃあ、どう見たって俺の方が親しみやすいのにな。」
 「見た目の問題ではなく、雰囲気の問題だろうぜ。」
 「俺の方がよくしゃべるし、明るいと思うんだがな。」
 「お前、煩い男と静かな男とではどっちが好きだ?」
 「ん?・・・あー、そういうことか。」と俺は納得した。カウンターにガジ丸がいるだけで、店全体が落ち着いた雰囲気になる。大船に乗った気分になる。
 「そうか、任せて大丈夫って気分だ。・・・俺だと不安なんだな、きっと。」
   −−−ある日のユクレー屋の情景−−−
語り:ケダマン 2009.4.24  次のケダマン 前のケダマン 最初のケダマン ユクレー島
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