厚い面の皮
 全身毛だらけの俺は寒さに強い。っていうか、生きているようで生きていない存在、マジムン(魔物)なので、暑さ寒さをそれほど強くは感じない。それはガジ丸やゑんちゅ小僧も一緒だ。毛だらけの俺は特に寒さに強い。2月の寒い日でも、太陽が出ていれば日向ぼっこをする。今日も、ユイ姉は「すごく寒い!」と言って、ずっと中にいる気温なのだが、陽射しがあり、風は弱い今日みたいな日は、俺は庭でのんびり過ごす。
 しばらくして、ゑんちゅ小僧が来たので、一緒に中へ入る。ゑんちゅも薄着だ。
 「あんたたち、寒くないの?」とユイ姉が驚いた顔で訊く。
 「俺たちはマジムンだ。」と俺が一言で済まそうとすると、ゑんちゅが補足する。
 「俺たちの皮膚は人間のそれとは違う。俺たちの体には毛細血管が無く、表皮も肉も、髪の毛や爪といったものと同じ性質になっている。なので、寒さ暑さはそれほど強く感じないんだ。痛みにも感じ方が鈍いだよ。喩えて言えば、俺たちの皮膚は角質層なんだね。角質層が厚い皮になって、それで全身覆われているんだよ。」
 「あー、そうなんだ。なるほど合点だよ。あんたやガジ丸はともかくさ、ケダは元人間だったでしょ、人間だった割には恥を知らない奴だと思ってたのさ。」
   −−−ある日のユクレー屋の情景−−−
語り:ケダマン 2009.2.6  次のケダマン 前のケダマン 最初のケダマン ユクレー島
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