出汁の無い吸い物 朝から、さーーーーわやかな秋晴れだった。ハンモック担いで浜へ出て、モクマオウの木にハンモックを吊るして、しばらく昼寝した。甘い潮風が吹いていた。そんな中、男と抱き合っているユーナの夢を見た。幸せそうな顔をしていた。 ユクレー屋に戻ってカウンターに座ると、出産を2ヶ月後に控えたマナが目の前に立っている。こちらもまた、全く幸せそうな顔である。 「なんか、つまらないなぁ。」 「何がさ、浜辺でのんびり昼寝してきたんでしょ?」 「のんびりしすぎてつまらないんだぜ、きっと。」 「贅沢だねぇ、良い天気ってだけでも私は幸せを感じるよ。」 「幸せねぇ、・・・おー、そうだ、ユーナの夢を見たぜ。男とハグしてたぜ。あいつもまあ、随分と幸せそうな顔してたなぁ。」 「あんた、ひょっとして、他人(ひと)の幸せを妬んでるんじゃないの?」 「妬みやしないがな、面白くも何ともないんだな。まあ、何ちゅーか、他人の不幸が甘い蜜なら、他人の幸せは出汁の無い吸い物ってとこだぜ。」 −−−ある日のマナとの会話−−− |
語り:ケダマン 2008.10.24 次のケダマン 前のケダマン 最初のケダマン ユクレー島 |