救急車の性能 ユーナの失恋騒動は一件落着したそうだ。 「一件落着って、結局、諦めたってことか?」 「諦めたわけじゃないよ。自分の心に素直になって、前に進むと決めたんだよ。ハッピーエンドになるかどうか分らないけどね。恋は紆余曲折、山あり谷ありだからね。」 「ほほう、さすが経験豊富な年増だ。恋の達人だな。」 「年増は余計だよ。ところでさ、あんた、このあいだハンモックに足絡ませて宙吊りになっていたじゃない。どうしたの?もう体が浮かなくなっているの?」 「あー、食い過ぎ飲み過ぎで、少々体が重くなっているみたいだ。」 「じゃあ、もう飛ぶこともできないの?」 「いや、まだ宇宙の引力を感じることができるし、飛ぶこともできる。ただ、前に比べると飛行の性能は落ちているだろうな。」 「あんたさあ、もしもの時の救急車なんだからさ、ちゃんと整備しておいてよね。飛べない豚はただの豚って言うけど、飛べないケダマンはただの毛玉だからね。」 「ただの毛玉って、・・・うーん、そうなるか。ちょっと鍛えるか。」 −−−ある日のユクレー屋の情景−−− |
語り:ケダマン 2008.10.10 次のケダマン 前のケダマン 最初のケダマン ユクレー島 |