馬の耳に記念物
 1週間ぶりにマナが戻ってきた。胎児の健康状態を医者に診て貰うためオキナワに帰っていたのだ。これからも月1回はそうすることにしたみたいだ。
 で、今日はいつも通りのユクレー屋、俺はカウンターの客側に座って、じっくりと酒を飲む。カウンターの向こう側とこちら側では、楽の度合いに大きな開きがある。
 「うーーーん、余は満足じゃ。」と、思わず口に出る。
 「何が満足なのさ、ダラダラ酒を飲んでばかりいて。あっ、そうだ。お土産があったんだ、あんたに。ジラースーからだよ。」とマナは行って、奥から何やら持ってきた。何か動物の耳の形をした彫刻だ。馬の耳くらいの大きさだ。
 「何だこれ、馬の耳みたいな形をしているが。」
 「その通り、『馬の耳に記念物』って名の置物だよ。ジラースー作のね。ジラースーの友達にギャンブル依存症の人がいてね、それを戒めるために贈った物だって。で、その人やっと、立ち直ってね、そして、無用になったからと返しに来たんだって。」
 「ほう、そうか、で、何で、それが今度は俺のところへ来るんだ?」
 「これの必要な奴は、他には怠け者のケダマンしかいないだろうってさ。」
   −−−ある日のユクレー屋の情景−−−
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