揺らぎの里 「街を歩いていると、何か攻撃されているみたいな気分になるよ。」 「そりゃあ、たくさんある直線の先から直線の気が放射されているからだ。」 「じゃあ、街を歩いている人々は皆傷だらけなの。」 「まあ、そういうことだな。目に見えない小さな傷でいっぱいだ。」 「みんな傷だらけになって痛くないのかなあ?」 「痛いと感じる人はあまりいないわな。疲れてはいるけどな。」 「ここにいると気分良いよね。何か守られている感じがするよね。」 「まあね。田舎に行くとどこでもそうだが、山や川や海があって、田んぼや畑が広がっていれば、そこには直線が少ないからな。空気が揺らいでいるんだな。ユーナの体も心もいつも揺らいでいるからな。それがこの空気としっくりくるんだな。」 「ユクレー屋って、屋根も柱も、看板も石垣もみんな歪んでいるよね。」 「あー、それがいいんだ。ここは揺らぎの里っていうわけさ。」 ―――ある日のユーナとの会話――― |
語り:ケダマン 2006.7.28 次のケダマン 前のケダマン 最初のケダマン ユクレー島 |