恋のスイッチ
 先週戻ってきて以来、マナは週末も平日もずっとユクレー島にいる。真夏の間は、猛暑のオキナワを離れ、気候の安定した島で暮らすつもりらしい。愛する亭主とは週末の3日間だけ会っている。金曜日と土曜日の夜は、二人で船で過ごしている。
 ずっと島にいて、マナは以前のようにユクレー屋の仕事をしている。妊婦も多少は体を動かした方が良いとのことだ。ユーナが手伝ってくれているので、楽にやっている。なわけで、ユクレー屋のカウンターにはマナとユーナの二人がいて、毎日賑やかだ。
 「ねぇ、マナはさ、恋愛経験豊富だよね。初めて付き合ったのはいくつ位?」
 「そんな豊富でもないよ。でも、中学の頃にはボーイフレンドっていうのがいたよ。プラトニックだったけどね。高校二年で恋人ができたね。相手は三つ上の大学生でね。大恋愛だったさあ。身も心も捧げたからね。」
 「そうかあ、いいなあ。私、全然無いんだよ、そういうの。」
 「あのさあ、私も若い頃は知らなかったんだけどさ、三十歳過ぎてから気付いたんだけどさ、恋にはさ、スイッチっていうものがあるのさ。それを押せばいいのさ。」
 「恋のスイッチって、私にもあるかなあ。」と、恋したいユーナは溜息をついた。
   −−−ある日のユクレー屋の情景−−−
語り:ケダマン 2008.7.25  次のケダマン 前のケダマン 最初のケダマン ユクレー島
inserted by FC2 system