幸せの塊
 「ねぇ、マナのとこへ陣中見舞いに行かない?」
 「陣痛見舞いって、マナの子供が産まれるのはまだ先だ。確か11月だぜ。」
 「バーカ、陣痛じゃないよ、陣中って言ったんだよ。」
 「陣中にしたって、別に、マナは戦をしているわけじゃないぜ。」
 「子供を産むのは戦みたいなもんなんだよ。」
 「あれ、このやろう、処女の癖に知った風な口ききやがって。」
 「煩ぇよ、このセクハラ。行くの行かないの、どっちなの?」
 泣く子と怒ったユーナには敵わない。ということで、ユーナを背中に乗せて、マナのとこへひとっ飛び、しようと思ったが、先週、ウフオバーを背中にひとっ飛びしたことを思い出した。今週には戻ってくるとマナが言っていたのも思い出した。
 「いや、そういえば、今週戻ってくるって言ってたぞ、マナは。」と言うや否や、店のドアがバっと開いた。マナが、そこに立っていた。明るいオーラを発散させている。我々に「お帰り」と言う間を与えずに、幸せの塊はパカっと口を開いて、
 「カッ、カッ、カッ、」と高笑いし、「空が青いねぇ。」と宣った。
   −−−ある日のユクレー屋の情景−−−
語り:ケダマン 2008.7.18  次のケダマン 前のケダマン 最初のケダマン ユクレー島
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