サンキュウ
 毎週金曜日の昼前にジラースーの船はユクレー島に着き、その後すぐに、マナはユクレー屋にやってくる・・・はずなのだが、今日は昼過ぎになっても来ない。その替わりなのか、マミナが来て、ウフオバーを手伝っている。・・・ということは、マミナは、マナが来ない、あるいは遅れるということを知っているというわけだ。で、
 「何でマナは来ないんだ?」と訊いた。
 「あんた、聞いてないの?」とマミナは言い、オバーに向き直って、
 「おばー、ケダに話してもいいのねぇ?」と訊く。
 「うん、いいんじゃないかねぇ、別に。」
 「サンキュウさあ、マナは。」
 「サンキュウって何だ?ありがとうってことか?何の意味だ?」
 「そうだねぇ、神様にありがとうってことかねぇ。」
 「神様にありがとうって、何がありがとうなんだ?」
 「気の回らない男だねぇ、あんたも。産休だよ、マナはしばらく。」
 「産休?って、できたのか?マナに、ジラースーのか?」と俺は絶句した。
   −−−ある日のユクレー屋の情景−−−
語り:ケダマン 2008.6.27  次のケダマン 前のケダマン 最初のケダマン ユクレー島
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