天然冷暖房器 6月の爽やかな気候が続いている週末の夕方、ユクレー屋には、カウンターに俺とゑんちゅ小僧が座っていて、カウンターの向こうにマナがいて、ウフオバーが台所にいる。マナが結婚する二ヶ月前までと変わらない風景となっていた。 「思い出すなー、一年前。マナが落ち込んでいた時のこと。それがよ、今はこんなに元気になってよ。まあ、なかなかのドラマがあったよなー。」と言うと、 「そうだね。ドラマだったね。」とゑんちゅが相槌を打つ。過ぎてしまえばみな良い思い出になっているのだろう。マナもニコニコしている。幸せの余裕だ。彼女は、平日はオキナワでジラースーの女房として暮らし、週末はユクレー島に来て、ユクレー屋でバイトしている。毎日、夫婦一緒というわけだ。そんな生活も一ヶ月が過ぎた。 「ここは爽やかだけど、オキナワは梅雨だろ?鬱陶しいだろ?」 「そうだねぇ、窓を閉め切ってしまったら、蒸し暑く感じるさあ。」 「そうか、オキナワはコンクリートの家が多いからな。ヒートアイランド現象ってやつだな。この島はコンクリートもアスファルトも無い代わりに、緑はたっぷりだ。」 「緑が多いから夏は涼しく、冬は暖かいんだね。天然の冷暖房器なんだね。」 −−−ある日のユクレー屋の情景−−− |
語り:ケダマン 2008.6.13 次のケダマン 前のケダマン 最初のケダマン ユクレー島 |