シッパイダーマン
 先週、ユクレー屋一帯に大雨が降った。そのせいで、ユクレー屋にこれまでには無かったことが起きた。雨漏りがしたのである。いつもの夜中に降る雨は、じっくりと地面に沁み込むようなシトシト雨で、その際には、雨漏りなんて起きなかったのだ。
 「ケダ、雨漏りするね、直してね。」とマナが言う。
 「雨を降らすよう博士に頼んだのはオメェじゃねぇか。」
 「はっさ、雨を降らせたのはケダののためにやったことじゃないさ。だから、雨漏りの修理はあんたがやるのが当然さあ。」ということである。俺がそうしてくれと頼んだわけじゃないのにだ。それが女の理屈である。女とは概ねそういうものである。
 「あんた、体が軽いでしょ、スパイダーマンみたいに壁をスタスタよじ登ったらさ、カッコイイと思うよ。」なんて煽てやがる。女とは概ねそういうものである。
 「そうか、それじゃあ。」と煽てに乗る。男とは概ねそういうものである。
 というわけで、今日、屋根の修繕をした。チガヤを束ねて、茅葺屋根に継ぎ足す。いちおう、ジラースーの助言通りにやった。しかし、俺は元々不器用である。こういった技術の要る仕事は苦手である。案の定、後日、修理は失敗ということが判明した。
   −−−ある日のユクレー屋の情景−−−
語り:ケダマン 2008.5.30  次のケダマン 前のケダマン 最初のケダマン ユクレー島
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