ウスベニニガナ
 昔付き合っていた女性が、ユーミンと山口百恵が好きで、よく歌っていた。当時、私はフォークギターを持っており、楽譜を見ればすぐに伴奏ができるほどには弾けたので、彼女は楽譜を買ってきて、私に見せて、私に弾かせて、たくさん歌った。
 彼女が愛したユーミンも山口百恵も、じつは私はあまり興味が無かった。ユーミンは都会的過ぎて田舎者の私の感性からはほど遠かった。山口百恵は厳しかった。人生って、そんなに厳しくは無かろう、もうちっとは楽だろうと若造の私は思っていた。
 私はまた、さだまさしも好きでは無かった。人間も社会もさほど優しくは無かろう。さほど美しくも無かろう。愛も囁くが、涙も流すが、屁もするし、雲子は臭かろう、と若造の私は思っていたのである。でも、好きでは無いが、彼の歌は知っている。
 薄紅の秋桜が秋の日の 何気ない陽溜まりに揺れている
 山口百恵の歌う秋桜(こすもす)、作ったのはさだまさし。何度も伴奏したものだから覚えてしまった。ちょっと練習すれば今でも弾けるかもしれない。ここで歌われる薄紅はコスモスのことだが、
 薄紅のニガナが冬の日の 何でも無い空地で揺れている。
となれば、人生は苦いこともあるよ。それでも、何となく生きてはいけるよ。優しくなくてもいいんだよ。綺麗じゃなくてもいいんだよ。生きてはいけるよ。というような内容になって、田舎者のオジサンには受け入れやすいのだが、いかがでしょう。

 ウスベニニガナ(薄紅苦菜):低地雑草
 キク科の一年生草本 国内では伊豆諸島以南に分布 方言名:ハルハンダマ
 花の色が薄いのでウスベニ、全体がニガナに似ているのでニガナとつくが、ニガナはニガナ(Ixeris)属で、本種はウスベニニガナ(Emilia)属。方言名のハルハンダマは「春のハンダマ」ということ。ハンダマは和語でスイゼンジナをいう。スイゼンジナは同じくキク科だが、Gynura属。倭国も琉球も見た目で名前をつけたということ。
 熱帯地方の原産で、国内では伊豆諸島以南に分布する。花色は紅色、または淡い紫色。沖縄では冬期によく見かける路傍の雑草。
 ハンダマ(スイゼンジナ)は体に良く、美味しい野菜であるが、本種が食用になるかどうかについては、文献に記載が無かった。私の見た目では美味しそうでは無い。

 花
 記:島乃ガジ丸 2006.6.5  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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