ウシハコベ/ハコベ
 七草粥の習慣が沖縄には無い。今でこそ、その時期スーパーに行けば春の七草セットなんてのも売ってはいるが、元々は無い。正当派(自称)ウチナーンチュである私は、よって、春の七草が何を指しているのか知らない。知らなくても沖縄では恥では無い。ちなみに、今回調べたところによると、芹(セリ)、薺(ナズナ)、御形(ゴギョウ)、繁縷(ハコベ)、仏座(ホトケノザ)、菘(スズナ)、蘿蔔(スズシロ)とのこと。このうち、セリ、ハコベ、スズシロ(大根のことらしい)以外の実物を、私は知らない。
 セリとスズシロ(大根と知ったので)は食べ物としてよく知っている。ハコベは、食べ物としては知らなかったが、畑の雑草としては馴染みが深い。また、その方言名であるミンナはもっと馴染み深い。別項ルリハコベで童歌『べーべーぬ草かいが』を紹介した。
 いったー あんまー まーかいが べーべーぬ 草かいが
 (お前の 母ちゃんは 何処へ行った 山羊の 草刈に)
 べーべーぬ まさぐさや はるぬわかみんな
 (山羊の 美味しい草は 春の若いルリハコベ)
ここで、ミンナをルリハコベとしている。ルリハコベもハコベ(コハコベ)もウシハコベも方言名はミンナとなっているが、『親子で見る身近な植物図鑑』に、ルリハコベは「ヤギのえさとしてよく利用されている」という記述があったので、それを信用してのこと。同書には、ウシハコベはウサギが好んで食べるとあった。

 ウシハコベ(牛繁縷):野草
 ナデシコ科の越年草 ヨーロッパ原産 方言名:ミンナ
 似たような植物で、比較的大きいものにオオ(大)とつけ、小さいものにコ(小)とつけたりするが、それらの代わりに、大きいものにウシ(牛)、小さいものにヒメ(姫)とつけたりする場合もある。本種はハコベより全体に大きいのでウシがつく。
 ハコベに比べて花も大きいが、それでも1センチに満たない小さな白い花。こんなHPでもやっていない限り見向きもしない、どころか、まったく気付きもしない花なのであるが、アップで見れば清楚な可愛いらしい花。春から初夏にかけて咲く。
 高さ70センチほどになるらしいが、それほど大きなものを私は見ていない。花は葉の腋から出る。花柱の数がハコベは3本で、本種は5本とのこと。

 花

 ハコベ(繁縷):野草
 ナデシコ科の越年草 ヨーロッパ原産 方言名:ミンナ
 古名をハコベラと言うが、その由来は不明。ハコベはそのハコベラが詰まったものであろう。別名コハコベともある。方言名では、ウシハコベもハコベもみんなミンナ。
 高さは30センチほど。春の七草の一つで食用になる。春に白色の小さな花を咲かす。
 記:島乃ガジ丸 2006.5.6  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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