ウリクサ
 子供の頃、本を読むのが好きで、偉人の伝記なども多く読んだ。多くの偉人の中で、私が最も関心を持ち、最も好きになったのは織田信長であった。その頃、「信長は腐れきった既成秩序の破壊者である。改革者である。」などと思ったわけではもちろん無い。ただ単に、「強くてカッコイイ」と思っただけである。
 子供向けの伝記本には挿絵が多く、そのいくつかは今でも記憶に残っている。信長の伝記本では、彼がまだ若い頃の場面で、馬に乗っている姿が描かれている絵。手綱は左手にあり、右手にはマクワウリを握っていた。本文に「マクワウリを齧り」という文章があったと思う。マクワウリという名を、私はそこで覚えた。
 マクワウリは真桑瓜と漢字で書き、メロンの一変種で、「美濃国本巣郡真桑村に産したのが有名であった」(広辞苑)とある。美濃国は信長の住む尾張国の隣国である。で、信長にもたやすく手に入る果物、または、おやつだったのであろう。

 私の畑にちょくちょく生えて、かわいらしい花を咲かせているウリクサが、そのマクワウリに果実が似ているらしい。ウリクサの果実を私はまだ見ていないが、その形が似ているのか、味が似ているのかはだいたい想像できる。なぜなら、ウリクサはとても小さいので、その果実もまたきっと小さい。形ならかろうじてマクワウリに似ていると判別できても、その味が似ているかどうかは、おそらく、米の一粒を口に入れて、それがコシヒカリかササニシキか判別するのと同じくらい難しいに違いない。よって、ウリクサの果実はマクワウリの味では無く、形が似ているのであると想像できるのである。

 ウリクサ(瓜草):野草
 ゴマノハグサ科の一年生草本 方言名:なし
 ウリ(瓜)とあるが、ウリ科の植物では無く、イヌノフグリやキンギョソウと同じゴマノハグサ科。果実がマクワウリに似ているから瓜草とのこと。
 道端や空き地の陽あたりのよいところに生えると文献にあるが、私の畑にもちょこちょこと顔をだす。センダングサやメヒシバなどのように蔓延るということは無い。アキノノゲシやタンポポみたいにポツンポツンと生えている。しかも、アキノノゲシやタンポポよりもずっと小さく、花も可愛らしいので、鬱陶しいという感じを与えない。
 根元から茎が分かれ、地面を這いながら広がるという性質を持つが、その広がり方はそれほど強くはないようで、上述の通り、蔓延った姿をあまり見ない。長さは5〜20センチほど。ちょこっと生えて、ぴょこっとカワイイ花を咲かすといった感じ。花は紅紫色。
 記:島乃ガジ丸 2006.2.3  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
inserted by FC2 system