チガヤ
 チガヤは既に、ススキを紹介しているページで、ついでにちょこっと紹介しただけで済ませている。しかし、イネ科の植物ではススキと並んで最も身近であるチガヤなのだ。これは単独でページを持たせなくてはなるまいと思って、今週はチガヤ。
 もう二十年ほど前の話になるが、漆芸家のMさんを訪ねた時、その家の近くにチガヤの群落があった。「雑草を放っているんですね。」と失礼なことを言うと、
 「放っているんじゃない。栽培しているんだ。」とやんわり答える。茅葺屋根に使うためとのこと。私はその時初めて、チガヤがチガヤという名前であることを知り、それが茅葺屋根の材料となっていることを知った。もちろん、沖縄が田舎だからと言って、その頃に茅葺屋根は一般的では無い。庭の構造物か、ヤギ小屋に使ったのであろう。
 Mさんと私の共通の知人である木工家のSさんが、茅葺の技術を持っているとのことであった。その技術、ずっと残して置いて欲しいものだ。
 近所の団地の原っぱにチガヤの群落がある。年に数回、定期的に刈られている。昔は有用だったチガヤも今では邪魔者としか扱われない。残念だね。

 チガヤ(茅):雑草、昔は屋根葺きの材料
 イネ科の多年生草本。北海道から沖縄まで各地に分布する。方言名:マカヤ
 チガヤは広辞苑に茅、及び白茅と漢字があてられている。茅は「カヤ」とも読み、「屋根を葺くのに用いる草本の総称。チガヤ・スゲ・ススキなど。」と同書にあった。カヤという音の由来は不明だが、白茅という字は納得できる。穂が白いから。チガヤのチも由来は不明。群生するところから千の茅ということかもしれない。
 ウチナーグチ(沖縄口)のマカヤはおそらく真茅。茅葺屋根に用いたカヤということから、これこそがカヤの中のカヤということだと思われる。
 綿毛のような白い穂は、小さくほっそりとしていてかわいい。高さもせいぜい1メートル程度(広辞苑には60センチとあった。倭国ではそうなのだろう。)なので、ススキのように鬱陶しいと感じることも無い。穂の開く時期、チガヤの群落は「きれい!」と感じられるほど。ただし、「チガヤの群落」と書いたように、チガヤは地下茎が伸びて、どんどん増えて、群落となることが多い。周辺に勢力を広げる力が強いのだ。畑の近くに1本でもあれば、あとあと面倒。よって、チガヤを見つけたら即、除去する。
 雑草ではあるが、上述のように昔は屋根葺きに用いた有用植物。群落の白い穂は陽光の下で銀色に光る。もう少し大人しければ、花壇に用いても良いような気がする。

 穂
 記:島乃ガジ丸 2008.2.5  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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