テリミノイヌホオズキ
 数年前だったか、動物占いなどというものが流行っていて、馴染みの喫茶店にたむろする占い好きのオバサンたちが、「私は馬、私は牛、私は羊、私は猫」などと騒いでいた。動物占いだけで無く、占いの類にあまり興味の無い私は、「あなたは何?」と問われても「俺は犬畜生では無い、人間だ」と答えるだけであった。
 ところで、この犬畜生という言葉、私は軽く使ったのであるが、なぜ犬なのかと、ふと不思議に思った。犬畜生は「犬や畜生」と並んだ意味では無く、「畜生の中の犬」ということであろう。畜生は、広辞苑によると「(人に畜われて生きているものの意) 禽獣(鳥と獣)・虫魚の総称」とある。つまりは、犬畜生というのは「動物の中でも特に犬である」ということで、人を罵るのに使われている言葉なのである。それでは、なぜ猫や牛、馬で無く犬なのか、さらに不思議に思う。よく考えれば犬に対しはなはだ失礼な言葉であると思う。動物たちの中で、特に犬がバカだということは無く、むしろ犬は、古代から人間の良いパートナーとなってくれているではないか。それを、侮蔑の言葉にするなんて。

 植物に対しても犬は、より劣ったものという意味で使われることがよくある。今回紹介するイヌホオズキもその一つ。ホオズキに比べると役に立たないかららしい。

 テリミノイヌホオズキ(照実犬酸漿):野草
 ナス科の一年生草本 熱帯アメリカ原産 方言名:ウヮーグヮーカート
 イヌホウズキと同属で、見た目も似ている。本種の実に照りがあることからテリミノイヌホウズキという名になっている。
 高さは20〜100センチになる。白色の小さな花が集まって咲くのはイヌホウズキと一緒。果実も丸く、同じくらいの大きさだが、照りがあることが違っている。本種はあちこちでよく見るので写真を撮るのに困らないが、イヌホウズキはまだ見ていない。
 と書いてから(2005年12月)すっかり忘れていたが、2015年6月に照りのないものに気付いた。訂正加筆:2018.12.2

 イヌホオズキ(犬酸漿):野草
 ナス科の一年生草本 世界の熱帯・温帯に広く分布 方言名:ウヮーグヮーカート
 イヌが頭につく植物はいくつかあるが、いずれも「劣ったもの」という意でつけられている。本種も、ホオズキに似て、その実が役に立たないからイヌとついた。
 高さは60センチほど。白色の小さな花が集まって咲く。実は丸く、熟すると黒紫色になる。どちらも鑑賞するほどでは無いので雑草扱いとなっている。
 記:島乃ガジ丸 2005.12.13  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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