タカサブロウ
 亡くなってからもう何年が過ぎたのか覚えていないが、私の好きな俳優に伴淳三郎という名脇役がいた。余人では表現できない人物、性格を的確に演じた人であった。彼のお陰で良い作品を作れた映画監督、ドラマの演出家は多かろうと思う。20年くらい前のTBSドラマ、「寺内貫太郎一家」だったか「ムー」だったかで足袋作りの職人を演じていた人といえば、中年世代以上では思い出す人も多いだろう。
 サブロウというと、歌手の北島三郎が一般的には有名かもしれないが、演歌の嫌いな私は北島三郎には興味が無いので、先ず、前述した伴淳三郎を思い出す。そして、伴淳三郎を思い出すより先に私の祖父のことを思い出す。祖父は真三郎といった。
 職場の庭で雑草の写真を撮り、文献を調べる。写真のものがタカサブロウという名前であると知ったとき、タカサブロウは当然、高三郎といったような人の名前に由来するものだろうと想像した。が、語源は不明とのこと。で、考えた。

 昔、薩摩の国に高三郎恒之(たかのさぶろうつねゆき、高は性)という武士がいた。恒之は清廉、実直、真面目で、弱いものには優しいという性格であった。彼は田畑の管理を担当する役人であったが、他の同僚たちよりも多く現場回りをし、百姓たちとも親しく付き合った。百姓と侍は利害の一致する仲間であるというのが彼の考え方で、百姓たちと共に作物の出来不出来を常に気にかけていた。病気で倒れた百姓がいれば、惜しみなく援助もした。そのために、自らは慎ましい生活を日々送っていた。
 畦道に慎ましく咲く小さな花があり、その飾りの無いところから、いつしか村人たちはその草のことをタカサブロウと呼び、他の雑草は刈り取っても、このタカサブロウだけは刈り取らずに畦道の景色として残したということである。
 ・・・なんて話はいかがだろうか。

 タカサブロウ:野草
 キク科の一年生草本 世界中の温帯・亜熱帯に分布 方言名:タバクフサ
 名前の由来が不明なのだそうで、広辞苑にも漢字の記載が無かった。高三郎さんが発見したのか。発見者が早死にした息子の供養のため、その名である孝三郎をとって名づけたのか。植えても無いのにあちこちからぴょこっと出てくるところを、神出鬼没の大泥棒である隆三郎に喩えた名前なのか。まあ、いずれにせよ、人の名前だと想像される。
 日本では本州以南、南西諸島までの各地のやや湿った場所に普通に見られる。高さは30センチほど。花は白色でキクに似た小さな花。春から夏にかけて咲く。

 花
 記:島乃ガジ丸 2005.10.24  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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