スナヅル
 友人Tは5人の子持ちである。上は高校二年生、下は小学校五年生までの三男二女。その五人をTは養い、見事に育てている。見上げたお父さんである。
 見上げたお父さんは以前、まあまあ高給取りのサラリーマンであった。数年前にその仕事を辞め、今は農夫として働いている。訊いたことは無いが、おそらく、収入はぐんと減ったに違いない。それでも、子供達はちゃんと育っていて、みな明るい。子供達だけで無く、T本人も明るい。元々前向きで、挫けない性格の持ち主なのである。
 そのTの店(野菜と鉢物などを売っている店)に、概ね隔週で私は通っている。農業に関する情報を得つつ、野菜を買っている。店の名は吉の浦ガーデンと言う。
 吉の浦ガーデンという名は、吉の浦という地名からきている。近くには吉の浦海岸があり、海岸を含む吉の浦公園という、野球場やテニス場などの施設を含んだ大きな公園もある。吉の浦ガーデンを訪れる際、時間のある場合は、吉の浦公園にも私は足を伸ばしている。おそらく、年に6、7回はそこを散策している。

 吉の浦公園で見つけ、このHPで紹介した植物は、クサトベラ、テリハクサトベラ、ソナレムグラ、イボタクサギ、イソフジなどいくつもあるが、今週紹介する二種の植物もそこで見つけたもの。二種とも、もう一年以上も前に見つけたのだが、のんき者の私はずっと放っていた。「腐るもんじゃ無いし」ということ。もし、これらが子供なら、のんき者は見下げたお父さんとなる。・・・子供は放っておくと腐るもの、だと思う。

 スナヅル(砂蔓);海浜地の野草
 クスノキ科の蔓性寄生植物 佐多岬以南に分布 方言名:ニーナシカンダ
 名前の由来について資料は無いが、砂浜に自生する蔓植物なのでスナヅル(砂蔓)なのであろう。方言名のニーナシカンダはネナシカズラ(根無し蔓)という意味、その通り、根が無い蔓。で、別名をシマネナシカズラと言う。ただし、ネナシカズラという植物は別にあって、ヒルガオ科の蔓性一年草の寄生植物、同様に根が無い。
 方言名は別ににソーミングサとも言う。細長いツルを差して素麺草という意味だが、ソーメンと呼ぶには、本種のツルは少々太め、ウドン草といった方が近い。むしろ、同じような場所に自生するアメリカネナシカズラの方がソーメンと呼ぶに相応しい。
 根が無くて、どうやって生きているのかというと、「吸収根という根でまわりの植物にまきつき栄養を奪い成長する。」とのこと。
 ツルは5mほどまで伸び、砂浜に広がる。花は白色、小さく(径2ミリほど)てあまり目立たない。開花期についての資料は無いが、私の経験から夏としておく。実はまん丸で多くつき、よく目立つ、径7ミリほど。花とほぼ同時期から付いている。
 学名は、Cassytha filiformis L.

 花

 実
 記:島乃ガジ丸 2009.10.6  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
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