シロツメクサ
 私が農業を教わったのは、自然農法を実践している友人だった。ニワトリを飼い、その糞で有機肥料を作り、畑に鋤き込み、土壌を力のある逞しいものにする。土壌に力があれば、その養分を吸収することによって植物も逞しくなる。逞しい植物は病害虫に対する抵抗力が強くなる。よって、農薬を使わずに済む。これが、有機農法の基本的な考え方。
 彼女の自然農法はさらに、雑草もあまり抜き取らない。水もあまりかけない。作物の種を蒔くときは天気を見て、明日、雨が降ると予想される時に植えた。蒔いた後に一度十分な水分が与えられれば、種は発芽する。発芽し、根を出しさえすれば、その後は水をかけなくても良いらしい。植物の根は、近くに水分が無ければ、水を求めて深く地中に進み、根を多く、長く伸ばす。それによって地上部も元気に育つとのこと。雑草を放っておくのは、作物の周りに雑草が蔓延っていると、土壌の養分を雑草に奪われるというリスクもあるが、土面から水分が蒸発しにくいという利点が大きいとのことだった。
 増えすぎた雑草は刈り取る。刈り取った雑草は畑の土面に敷き詰め、そのうち腐って、畑の養分になる。雑草の中にはまた、腐らせなくても畑の土に鋤き込めることのできるものもある。そういうのを緑肥と言う。緑肥となる草に彼女のお勧めのものがあった。

 数年前に、アパートの畑に彼女お勧めの草の種を蒔いた。その草で畑の土面を覆い尽くし、土面からの水分蒸発を防ぎ、彼女の畑同様に水をかけずに済む野菜作りをし、その野菜の収穫が終わったら、上等な緑肥となる草ごと畑を耕して、さらに健康で逞しい土壌にしようと思ったのだ。その役に立つ草の名はシロツメクサという。
 シロツメクサの種を蒔いた後、しばらくして畑を覗くと、そこにはシロツメクサでは無く他の何種類かの雑草が蔓延っていた。シロツメクサは、種の蒔き時を間違えたか、蒔いた後水分が十分でなかったのか、はっきりした理由は知らないが、何十粒と蒔いたシロツメクサの種はただの一粒も発芽していなかった。幸運の少ない人生を送っている人にはよくあることなのだが、望むものは現れず、要らぬものはいくらでもやって来る。
 和名のシロツメクサでは知らない人も多かろう。別名の方がずっと有名。クローバーと言う。散歩の途中の公園で見かけたときなどは、一服ついでに“四葉のクローバー”を探したりするが、一度もお目にかかったことは無い。幸運の少ない人生を送っている人にはよくあることなのだが、幸せの予兆さえなかなかやってこない。茶柱も立たないぜ。

 シロツメクサ(白詰草):野草
 マメ科の多年生草本。日本全土に分布する。方言名:無し
 低地の野原や空地に自生し、伸びた茎から根を出して広がるので群落を作ることが多い。広辞苑で調べると、夏に白色の花を咲かすと書いてあったが、沖縄では年中咲いている。掲載した写真もついこの間、2月の中半に撮ったもの。
 ヨーロッパ原産の帰化植物で、緑肥や牧草として栽培もされる。別名クローバーと言うが、そう、あの“四葉のクローバー”のクローバー。

 花
 記:2005.2.20 島乃ガジ丸  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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