シナガワハギ
 大学の5年間(1年は留年)を、私は東京で暮らした。4年生の2月、卒業できるかどうか危うかったのではあるが、「冬の寒さにはもうこれ以上耐えられない!卒業できてなくてもいいや!」と思い、私は逃げるようにして、沖縄へ帰った。
 卒業してから20年余が過ぎた。この間に、私は十数回、旅行で東京を訪れている。冬の東京も2、3回訪れている。旅行で訪れる東京は、冬でもきつくない。むしろ、冬の方が沖縄の日常に無い感覚が味わえるので、冬の旅の方が楽しいと言える。
 旅行の冬がきつくないのは、「どうせ3、4日さ」という心の余裕である。梅雨が終わる(梅雨明けの平年値は6月23日)と、沖縄に本格的な夏が訪れる。その頃、「これから10月までこの暑さが続くのか」と思うと、私は気が滅入る。「4ヶ月も」には心の余裕が生まれ無いのである。それでも、東京の冬を生活するよりはまだまし。沖縄の夏は、じっと我慢していれば済むが、東京の冬は、じっとしていると、死ぬ恐れがある。

 大学の5年間を私は吉祥寺、武蔵境、小金井、国分寺で過ごし、友人の多くも高円寺、阿佐ヶ谷など中央線沿線に住んでいて、遊び場所もだいたいその近辺であった。都心へ出かけることはめったになかった。しかし、卒業後は、東京での滞在は主に都心である。ホテルは品川駅近辺にすることが多い。羽田への交通の便を考えての事。というわけで、品川という名前は、今の私には馴染み深い。その馴染み深い名前のついた植物も、図鑑を見たときに覚えてしまい、実物を見た時には、すぐにそれと判った。

 シナガワハギ(品川萩):低地雑草
 マメ科の二年草 原産分布は中国大陸北部 方言名:アンダグサ
 東京都の品川に野生していたのでシナガワという名らしい。ハギ(Lespedeza属)とは別属(Melilotus属)ではあるが、葉や全体の形が似ているということなのであろう。
 高さは1mほど。茎の先に蝶形で黄色の小さな花は穂状につける。
 開花期について文献に記載は無いが、文献の写真は2月、私の写真は4月で、6月になった今でも咲き続けている。広辞苑には「夏」と書かれてあった。
 同じく広辞苑に、「乾くと佳香がある」との記述がある。これは、試してみたい。家畜の飼料、薬用にも利用されるとのこと。

 花
 記:島乃ガジ丸 2006.6.5  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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