セイバンモロコシ
 高校生の頃、チョイ悪少年だった私は、親の金をくすねては時々パチンコ屋へ通った。チョイ悪少年の仲間は何人もいて、クラス一の優等生だったAもその一人であった。私の家では、外食は年に数回あるかないかだったので、外食で出される料理についての知識が私にはあまり無かったが、Aの家は裕福で、その点、彼はよく知っていた。
 ある日のパチンコの帰り、儲けた彼が奢ると言い、ラーメン屋へ入った。ラーメン屋の看板にはサッポロラーメンと書かれてあった。そこで彼が、「これは美味いよ」といって勧めたのがモロコシバター味噌ラーメンであった。私は初体験。
 それまで、トウモロコシを食った経験は何度もあり、アメリカ文化の影響で、缶詰のコーンを使った料理は家でもたびたび口にした。コーンスープやチャーハン(焼き飯と当時は言った)に入っていた。卵焼きにも時々入っていた。
 昔、祖父が庭でトウモロコシを作っていたことを覚えている。トウモロコシというと北海道を連想するが、沖縄でも作れるのである。

 モロコシとはトウモロコシのことだとAは当時言っていたが、今回調べてみると、モロコシという作物はトウモロコシと同属ではあるが、別種であった。さらに、今回紹介するセイバンモロコシもまた、同属の別種。モロコシと聞くと、モロコシバター味噌ラーメンから美味しいものと連想してしまうが、このモロコシはしかし、食えないらしい。ところが、沖縄の野原で最も多く見かけるのはセイバンモロコシである。残念。

 セイバンモロコシ(生蕃唐黍):牧草・雑草
 イネ科の多年草 日本では帰化植物。熱帯から亜熱帯に広く分布 方言名:なし
 セイバン(生蕃)は「(中国から見て)教化に服さない異民族」(広辞苑)のこと。モロコシ(唐黍)はトウキビとも言い、世界で広く栽培されている重要な穀物。熱帯アフリカ原産のイネ科の一年草。それと同属で、セイバンから来たものということであろう。あるいは、モロコシより劣ったものという意味でセイバンなのかもしれない。
 高さは2mほど。牧草として導入されたようだが、野生化して道端や空地の雑草となっている。牧草であるのに若葉は毒を含むとのこと。牛は大丈夫なのであろうか?
 ちなみに、本種はモロコシと同じイネ科モロコシ属であるが、モロコシ属には他に、誰もが知っている秋の旨いものトウモロコシがある。唐のモロコシという意味なので、漢字は唐唐黍となりそうだが、ややこしいと思ったのか、玉蜀黍となっている。

 穂

 モロコシ(蜀黍、唐黍):穀物
 イネ科の一年草 熱帯アフリカ原産
 熱帯、亜熱帯地方で広く栽培されている作物。日本で栽培されているものは飼料となる品種がほとんどらしいが、穀物として食用となる品種も多い。高粱(コーリャン)という名はよく聞くが、これは中国で多く栽培されている品種とのこと。よく聞くのは私が酒好きだからかもしれない。コーリャンは白酒(パイチュウ)の原料となる。

 トウモロコシ(玉蜀黍):穀物
 イネ科の一年生植物 中南米原産
 人間の食料や家畜の飼料、デンプン、油の原料として重要な作物。品種としてはスイートコーン、ポップコーンなどが有名。
 モロコシラーメンに入っているものはスイートコーン。焼いたコーンも私は好きであるが、食べた後に爪楊枝が必要となる。

 それぞれの学名は
 セイバンモロコシ Sorghum halepense (L.) Pers.
 モロコシ Sorghum vulgare
 トウモロコシ Sorghum Zea may
 記:島乃ガジ丸 2007.1.6  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
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