セイバンナスビ/ヤンバルナスビ
 今週紹介しているカメムシ8種4ペアのうち、3ペアについては、そこで紹介しているそれぞれの2種が互いに判別が難しくて、「同定は難しいよ」シリーズという話になっているが、植物でも「同定」の難しいのはいくつもある。というわけで、というか、まあ、ついでなので、本頁は「同定は難しいよ」シリーズ植物編。

 去年の2月に写真を撮った植物が、セイバンナスビなのかヤンバルナスビなのかキダチワルナスなのかずっと判断できないまま、8月になって別の場所で似たような植物を見つけ、それもまた、セイバンナスビなのかヤンバルナスビなのかキダチワルナスなのかずっと判断できないまま、11月にも別の場所で、今年の2月にもまた別の場所で似たような植物を見つけた。それぞれ写真を撮って、文献と照らし合わせているが、不明。
 文献によると、葉に切れ込みの無いのがヤンバルナスビで、葉に深い切れ込みのあるのがセイバンナスビで、切れ込みがさらに深いのがキダチワルナスのようである。ところが、私が撮った写真では、同じ個体から出ている葉なのに、切れ込みが深かったり緩かったり、あるいは、無かったりもしている。「どっちなんじゃい!はっきりせい!」と怒鳴っても、彼らは答えてはくれないのである。花の色形は、文献で見る限り、3種ともほとんど同じなので、花による判別はなおさら難しいのであった。

 セイバンナスビ(生蕃茄子):雑木
 ナス科の常緑低木 熱帯アジア原産 方言名:なし
 セイバン(生蕃)とは中国で「教化に服さない異民族」(広辞苑)のことで、中国から見て野蛮な外国から来たナスということになる。
 高さ3mほどになる低地の雑木。文献に「食用」とあったが、詳しいことは書いておらず、実が食えるのか、葉が食えるのかは不明。枝のところどころに棘がある。
 花の大きさは2センチ位。白色から薄紫色をしたかわいらしい花を、花茎を伸ばし、その先にいくつも集まって咲かせる。文献に開花期の記載は無いが、私が見たのは2月、文献の写真は10月、長い期間咲いているようである。

 花

 実


 ヤンバルナスビ(山原茄子):雑木
 ナス科の常緑中木 沖縄に自生 方言名:ヤマタバク
 高さ2〜4mほどになる低地の雑木。全体にセイバンナスビに似ているが、葉に切れ込みが無く、毛が生えていて白っぽく見えるところが違うようである。
 枝先から花茎を伸ばし、その先に多数の白い小花をつける。これも開花期の記載が文献に無い。文献の写真は1月。
 ヤンバルと名があるからには沖縄の固有種かもしれないが、詳細は不明。方言名のヤマタバクは山の煙草ということ。タバコの葉に似ているのだろう。

 花

 実

 キダチワルナス(木立悪茄子):雑木
 ナス科の常緑中木 沖縄に自生があるらしいが、方言名はなし
 セイバンナスビもヤンバルナスビも、そして本種も同じナス(Solanum)属で、同じく木立性の木本。本種も直立して高さ3〜4mになる。
 セイバンやヤンバルに比べてずいぶん可哀想な名前であるが、役に立たないということなのであろう。文献の写真を見る限りでは、本種とセイバンナスビの違いが、私にははっきり判らない。花の色形はほとんど一緒。葉の切れ込みが、本種の方が深い。
 記:島乃ガジ丸 2006.7.1  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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