オオキバナムカシヨモギ
 「昔」は名詞であるが、漢字として別の漢字の前に付いたりするとその漢字を形容する役にもなる。なので、解釈する際、ちょっと迷ったりする。
 昔美人、友人のI女史のことを私は時々そう形容するが、この場合は「若い頃は美人」という意味で使っている。しかし、昔美人という熟語を字面で見た場合は「昔風の美人」と捉えることもできる。ぽっちゃり頬の膨らんだおちょぼ口の色白は「平安時代であれば美人」ということになる。もっとも、美人かどうかを感じるのは個人の感性によるので、今の世でぽっちゃり頬が膨らんでいたりしても、あるいは、口が大きくて色黒であったりしても「それが美人」と感じる男は当然いる。ので、美人で無い人も御心配無く。

 ムカシヨモギのムカシがどういう意味なのかを考えてみた。「元々はヨモギという名で食用としていたが、もっと美味しいヨモギ(蓬)を発見し、その後は、その美味しいヨモギがヨモギとなり、美味しく無い方はムカシ(昔)と前に付いて区別された」のか、あるいは、「姿形がヨモギに比べ何か古臭い」のでムカシと形容されたのか、など、畑仕事で忙しい中、草刈りなどしながらあれこれ想像を巡らせた。
 で、その結果、「姿形が古臭いというのは抽象的過ぎるな、おそらく、美味しいヨモギが発見されたからというのが正解に近いだろうな」などと勝手な結論をつけたのだが、それはまったく根拠のないことなので、世の中の役には立たない結論である。
 時間をかけて役に立たない結論を出したが、今回紹介するオオキバナムカシヨモギはムカシヨモギと名は付いているが、ムカシヨモギ属ではなかった。姿形がヒメムカシヨモギに似ているからその名が付いたと思われる。やはり、役に立たない結論であった

 オオキバナムカシヨモギ(大黄花昔蓬):野草
 キク科の多年草 種子島以南の南西諸島(宮古島除く)などに分布 方言名:不詳
 名前の由来は資料が無く不明。オオキバナは背が高いのでオオ(大)、花色が黄色なのでキバナ(黄花)ということであろう。ヨモギは蓬のこと、沖縄ではフーチバージューシーなどの料理で親しまれているが、そのヨモギとは似ていない。ムカシヨモギは昔蓬のことで、ムカシヨモギ属の植物であるヒメムカシヨモギには多少似ている。ただし、本種は同じキク科だが、ムカシヨモギ属では無くツルハグマ属。
 別名にナガバコウゾウリナとある。コウゾウリナは広辞苑にあり、髪剃菜と書いて「キク科の多年草・・・茎・葉全体に剛毛があるため、かみそりを連想しての名」とあった。本種はそのコウゾリナと同属で、葉がより長いということなのであろう。
 コウゾリナは「若葉を食用」とあったが、本種も食用となるかは不明。
 開花期に根出葉は枯れ、茎葉は上部にいくにしたがって小型になる。「小形になる」については確認済み。茎・葉全体に剛毛があるかどうかは未確認。
 林縁に生え、茎は直立して高さ1〜2mになる。茎の根元は木質化する。茎の先に円錐花序を出し多数の頭花をつける。頭花の色は黄色で、開花期は3月から4月。頭花には雌花と両性花がある。ちなみに学名、ムカシヨモギ属にはハルジオンなども含まれる。
 オオキバナムカシヨモギ Blumea conspicua(ツルハグマ属)
 ヒメムカシヨモギ Erigeron canadensis(ムカシヨモギ属)
 ハルジオン Erigeron philadelphicus
 ヒメジョオン Erigeron annuus
 ヒメムカシヨモギに似たアレチノギク、オオアレチノギクはイズハハコ属になる。
 アレチノギク Conyza bonariensis(イズハハコ属)
 オオアレチノギク Conysa sumatrensis

 花
 記:島乃ガジ丸 2013.5.16  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
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 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行
 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行
 『ニッポンの野菜』丹野清志著、株式会社玄光社発行
 『藤田智の野菜づくり大全』藤田智監修、NHK出版編
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